ハスとスイレンは見かけは似ていても、まるで別物。でも、コブシ(辛夷)とモクレン(木蓮)は、共にモクレン科モクレン属の落葉広葉樹。いずれが好きかと問われても、私には優劣つけがたしです。コブシの花はふつう一個の雌しべをもち、これが成熟して一個の果実となります。でも、一個の花に多数の雌しべがあると、その多数の雌しべから一個の果実ができます。一つの子房に由来する果実が「単果」、一つの花の複数の子房に由来する果実が「集合果」。イチゴが集合果の代表で、コブシもその一つ。
コブシやハクモクレン、タイザンボクなどのモクレン科モクレン属の集合果はいずれも似た形をしていて、弾けると、中から大きめの赤い種子が糸を引いて出てきます。コブシは種子を包む袋が垂れ下がって、綺麗なピンク色になるので、特によく目立ちます。「コブシ」と言う名前は、この実が子どもの「握り拳」に似ているところから付けられたと言われています。
コブシの実は発生阻害としか思われないような形状で、大きさも様々、袋菓が結合し、所々に瘤が隆起した形状。私たちが食べる果実は色や形が整っていますが、コブシの実はそれとは正反対の形で、なぜなのかとても気になります。コブシの集合果はその異様な形状だけでなく、種子も不思議な様態です。これまた好奇心を掻き立てるのです。