鬼なべな、あるいは羅紗掻草の花

 その学名はDipsacus fullonum。和名はオニナベナ(鬼なべな)、ラシャカキグサ(羅紗掻草)で、ユーラシアとアフリカ北部原産のスイカズラ科ナベナ属の越年草です。

 ローマ時代には葉がハーブとして利用され、化膿止めの薬効があるとされました。太い茎には硬い棘があります。夏に、すらっと伸びた枝先に淡紫色の頭花を咲かせます。花後に棘のある小葉が出ます。

 ティーゼルにはフロヌム(Dipsacus Fullonum)の他に、サティウス(Dipsacus sativus)があり、画像はフロヌムと思われます。オニナベナの頭花は卵球形で、花は頭花を巻くようにリング状に咲き始め、その後、上下に咲き広がっていきます。その変わった咲き方のため、日本では鑑賞用として人気があります。

ラシャカキグサ(羅紗掻き草)という名前は、花序の小苞の先端が鉤状に曲がるのを利用して羅紗の起毛に使ったからです。明治時代に植物がヨーロッパから導入され、織物工業の盛んな大阪の泉州地域で栽培されていました。最近では大部分が針金製に代わってしまいましたが、ラシャカキグサほどの弾力性がなかなか出せないために、ビリヤード台の緑の羅紗をとく櫛には、この植物の花序が使われることがあります。