神社本庁

 多くの方が「神社本庁」という名前を聞いたことがある筈です。神社本庁は、伊勢神宮を本宗とし、日本中の神社を包括する宗教法人で、「庁」が付いていますが、役所ではありません。神社本庁は宗教法人法に基づく私的な包括宗教法人の一つに過ぎません。神社本庁神道系の宗教団体として日本最大で、約8万社ある日本の神社のうち7万8000社以上が加盟し、各都道府県に神社庁を持っています。神社本庁は渋谷区代々木に事務組織があります。「神社本庁」も「神社庁」も何とも紛らわしい名称で、法的には宗教法人という私的な組織なのです。

 神道には明治維新まで統一した組織がありませんでした。1890年に信教の自由が認められ、神道も宗教団体として内務省の社寺局から独立し、神社本庁の前身となる大日本神祇会が設立されました。皇道学・皇室祭祀・全国神社の祭祀や形式が次第に確立されましたが、戦後GHQによる政教分離策である神道指令が出され、それによって大日本神祇会は廃止され、国家機関から独立した宗教法人として、1946年に神社本庁が設立されました。

 仏教はいくつかの宗派に分かれていて、それぞれの寺は特定の宗派に属しています。でも、仏教とは違って、神道には宗祖がおらず、教義も教典も存在しません。教義も経典もない宗教とは一体どのような主張をもっているのでしょうか。そのためか、神社本庁は全国8万社近くの神社の人事に関する決裁権をほぼ独占しています。これは仏教の各宗派の組織や、フランチャイズの本部と加盟店との関係などを考えると、桁外れの強い力をもっていることがわかります。神社本庁宮司の任命権などを独占し、権力が集中しているのです。人事に絡む事件と言えば、想い出されるのは近くにある富岡八幡宮の事件です。神社本庁の人事が引き金となり、宮司を巡って姉を弟(元宮司)が殺害した殺人事件が2017年に起きました。

 信者が減少し、過疎化が進んでいる地域での神社の問題は深刻なのですが、そういった神社の存続問題よりも、憲法改正などの政治問題が優先され、各地の神社と神社本庁との乖離、軋轢が嵩じています。神社本庁日本会議を支持する最も有力な団体で、各地の神社の具体的な問題より政治的なパフォーマンスが優先される傾向にあります。日本会議の会員は全国で約4万人、国会議員の半数以上は日本会議と何らかの接点を持っているとも言われています。

 神社本庁に加盟していない単立神社は約2,000社ありますが、主な神社には出雲大社靖国神社日光東照宮伏見稲荷大社富岡八幡宮などがあります。