ヤブガラシ(藪枯らし)の花

 ヤブガラシの別名はビンボウカズラ(貧乏葛)。いずれの名前からも強烈な繁殖力が想像できる。私が住む湾岸地域でもあちこちで蔓延っている。そのヤブガラシが今花盛り。花は散房状の集散花序と呼ばれ、主軸の先端に花がつき、下から横枝が出て、その先から花がつき、これが独自の幾何学的な模様を生み出している。

 花びらとおしべは開花後半日ほどで散ってしまい、めしべが中央に立っている橙色やピンク色の花盤(盤状の花托)だけが残る(画像)。そのため、午後にはつぼみか花びらが散ったものしか見ることができない。午前中であれば、花びらとおしべがある花を幾つか見ることができる(画像)。花は薄緑色の花弁4枚とおしべが4本、めしべが1本ある。

 要するに、花は朝に開花し、昼前には花弁とおしべは脱落し、めしべが中央に立った花盤が残るという訳で、いつ観察するかで姿は随分と変わる。めしべだけが花盤に取り残される前におしべが伸びて花粉を昆虫につけると、花弁とおしべは役目を終える。残っためしべに昆虫についた花粉をつけさせるという作戦は、自家受粉を避けるための工夫で、何とも見事な企みである。藪をも枯らしてしまう能力はこの企みに拠るのだろう。