ナツツバキを巡って

 昨夜ナツツバキについて記した。その別名がシャラノキで、多くの日本人はサラソウジュ(沙羅双樹、娑羅双樹)を連想する。サラソウジュはフタバガキ科サラノキ属の常緑高木。幹高は30mにも達し、春に白い花を咲かせ、ジャスミンにも似た香りを放つ。仏教では二本並んだ沙羅の木の下で釈尊が入滅したことから沙羅双樹と呼ばれ、仏教の聖木である。

 『平家物語』に出てくる沙羅双樹は夏椿で、日本には沙羅の木がなかったため、よく似た夏椿を沙羅の木の代わりに寺院などに植えた。その冒頭の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色盛者必衰の理をあらわす」は、祇園精舎の鐘の音には「諸行無常(この世のすべては絶えず変化していく)」の響きが含まれ、沙羅双樹の花の色はどんなに勢い盛んな者も必ず衰えるという道理を示しているという意味である。

 沙羅双樹釈尊が入滅のとき、香り高い淡い黄色の花が咲いていたが、入滅と同時に沙羅の木は枯れてしまう。その後、釈尊の死を悲しむかのように再び真っ白な花を咲かせ、その白い沙羅の花が舞い散り、釈尊を覆いつくしたと言われている。

*画像はツバキとゴードニア・ラシアンサス(ジョウリョクシャラ、常緑沙羅)、ナツツバキの花。ゴードニアは北アメリカ原産の常緑高木で、ナツツバキに似た花を咲かせる。涅槃会は2月15日であるから、その頃咲いているのは白い花のツバキやゴードニア。

ツバキ

ナツツバキ

ジョウリョクシャラ