ベニバナトチノキの花から

 ベニバナトチノキの花が咲いています(画像)。ベニバナトチノキは北米南部原産のアカバトチノキとヨーロッパ原産のセイヨウトチノキ(=マロニエ)の交雑種。セイヨウトチノキはパリのシャンゼリゼの街路樹が有名ですが、花期は5~6月で、赤い模様の入った白い花が咲きます。トチノキは日本原産で、マロニエの実の果皮にはトゲがありますが、トチノキにはありません。

 トチノキは私に栃餅を連想させるのですが、マロニエから私が連想するのはサルトルの小説『嘔吐』(La Nausée)(1938年)。存在に対する嫌悪感は「吐き気」として表現され、彼はそれを公園のマロニエの根を見ながら自覚します。公園のベンチに座って目の前のマロニエの根を見た時、激しい吐き気に襲われ、それが「ものがそこにあるということ」が起こすものだと気づくのです。この「実存に対する嘔吐反応」によって彼の意識は朦朧としていきます。この「吐き気」はゲシュタルト崩壊であり、サルトルの「実存は本質に先立つ」という主張は実存主義のスローガンとして多くの支持を得ました。

*最後の画像は大きなトチノキで、よく見ると白い花が見える。