シランの花

 このところ厄介な名前の植物が多いのだが、「シラン(紫蘭)」は単純明快である。ラン科シラン属のシランの野生のものは何と準絶滅危惧種だが、栽培品としては広く普及していて、湾岸地域でも今はあちこちに赤紫色の花を咲かせている。ラン科の植物には珍しく、日向の畑土でも栽培でき、庭や公園に広く植えられている。とても丈夫な植物で、とかく栽培が面倒なランの仲間ではこの花ほど親しまれているランはないだろう。関東地方以西の里山の土手や崖に生えるが、植栽植物として親しまれているため、野生種か栽培種かの区別がつかなくなっている。別名は紅蘭(ベニラン)、朱蘭(シュラン)。

 春になると、地下に連ねた扁平な地下球(偽球茎)からササのような葉茎を伸ばし、先端に赤紫色の華麗な花を咲かせる。晩秋には葉を落とし休眠する。俳句の季語は夏で、3月から咲いているシランは今年の暑さを予言するかのようである。