ヤツデの花(1)

 ヤツデにとって重要でない話から始めましょう。私の世代には和風住宅の汲み取り式便所の目隠しに重宝されたのがヤツデで、トイレの近くにはヤツデを見つけることができました(今はすっかり変わりました)。また、ヤツデの花にはハエが特に多く集まり、ハエ媒花の植物です(これは今も変わりません。画像のハエはオオクロバエと思われます)。

 葉の直径は20~40cmと大きく、ヤツデは「天狗の団扇(うちわ)」とも呼ばれます。「八つ手」とはいうものの、葉は8つに裂けずに、7つか9つに裂けます(画像)。いずれも奇数ですが、縁起を担ぐため、あるいは単に「たくさん」を意味するため「ヤツデ」となったようです。ヤツデの学名はFatsia japonicaですが、fatsiaは「八手(ハッシュ)」が転訛したものです。

 魔除け、厄除けだったヤツデの葉にはサポニンが含まれ、『大和本草』では食べると死ぬと考えられていました。でも、それほど強い毒性はありません。

 ここまでは人がヤツデをどのように捉え、利用してきたかということで、ヤツデにとっては些細なこと、どうでもよいことです。