少子高齢化

 「少子高齢化」という単語を聞いたり、読んだりしない日はまずありません。それほどポピュラーになってしまった語彙で、あらためてそれが何を意味しているかを考え直す人はまずいないでしょう。少子高齢化とは「少子化」と「高齢化」が共に集団に起こる状態を表現していて、「集団が少子化し、高齢化している」ことを表現しているのですが、高齢化の方がわかりやすく、少子化はその原因の特定が意外と厄介です。

 集団内の高齢者(例えば、65歳以上の者)の割合が一定以上になると、その集団は「高齢化」していると言われます。一方、個人の寿命が長くなることは「長寿化」と呼ばれます。個人が長寿化する原因は、医学的な治療や予防、食料、社会環境の改善などが主なものです。集団のメンバー、つまり、個人が長寿化すると、集団の高齢化が起こります。欧米の先進国は国民が長生きし、集団が多くの高齢者を含むようになることを経験してきました。

 「少子化」とは集団内の子供の比率が減少する現象です。生物集団が少子化することは集団のサイズが減少し、集団が絶滅することに繋がりますから、不自然で、集団にとっては危険な現象です。ですから、少子化の原因解明は重要な研究項目になります。人の場合、その原因は自然的なもの、社会的なものに分かれます。社会的な原因は、婚姻、出産、育児に関するメンバーの選択が密接に絡み合ったものです。

 高齢化と少子化が共に起こるプロセスは人口のサイズを変えるプロセスであり、そのため、人口転換プロセス(=高齢化と少子化のプロセス)と呼ばれています。

 出生率と死亡率が共に高い状態にある社会、例えば中世社会が産業革命によって近代化すると、死亡率がまず低下し、その後出生率も低下しました。出生率が死亡率より高い間は、人口が増加します。現在では多くの先進国で出生率が低下を続け、死亡率より低くなっています。出生率が置き換え水準(人口が長期的に増えも減りもせず、一定となる出生水準)以下になると、集団は若年層ほど少なくなり、人口は次第に減少していきます。これが「少子高齢化」です。

 少子高齢化と人口減少には地域差があり、一様ではありません。日本の農村域では少子化に加え、都市域への若年人口の流出によって、高齢化と人口減少が急激に進んできました。これが「過疎化」で、地域コミュニティの崩壊が懸念されてきました。また、少子高齢化は家族レベルの様々な問題を引き起こしています。その典型例が親と子の同居とサポートの問題です。

(問)次の各文は正しいか。

・集団が少子化すると、集団は高齢化する。

・集団が高齢化すると、集団は少子化する。

・集団が少子化しても、高齢化しない場合、集団が高齢化しても、少子化しない場合がある。

・「少子高齢化」と「高齢少子化」は同じ主張である。

・「少子高齢化」の反対概念は「多子若齢化」である。