春よ来い

 童謡「春よ来い」の作詞は相馬御風。早稲田大学の校歌「都の西北」の作詞でも知られる御風は糸魚川市が故郷。雪国越後の春を待つ気持ちが長女の文子(あやこ)や梅の蕾によって表されています。

 

春よ来い 早く来い
あるきはじめた みいちゃんが
赤い鼻緒(はなお)の じょじょはいて
おんもへ出たいと 待っている

春よ来い 早く来い
おうちの前の 桃の木の
蕾(つぼみ)もみんな ふくらんで
はよ咲きたいと 待っている

 

 「みいちゃん」は御風の長女「文子」とされています。文子が生まれたのは大正10(1921)年2月20日。歌詞が書かれたのは恐らく歩き始めて間もない頃と思われます。歌詞には「じょじょ(草履)」、「おんも(表・外)」などの幼児の言葉が入り、「あるきはじめた」ばかりのみいちゃんの気持ちを通して、雪国越後の春を待ち望む思いが表現されています。女の子の健やかな成長を願って雛祭りに飾られるのが桃の花。桜より先に花を開きます。

相馬文子(1921-2009)は日本近代文学研究者で、1941年日本女子大学国文科卒、東京帝大史料編纂所に勤め、戦後は日本女子大付属図書館司書として勤務。日本近代文学館評議員、同図書資料委員会幹事。『若き日の相馬御風-文学の萌芽』など、複数の著書があります。