タイサンボクの花と実

 久し振りに検査のために病院に行くと、玄関の左手に大きなタイサンボクがあるのが飛び込んでくる。だが、私にはタイサンボクが玄関横にあるという記憶がまるでないのだ。これまでそれに気付かなかったことが不思議なのだが、タイサンボクの大木が突然に存在することになった。私の認知症のスタートというより、人はものをしっかり見ていないのだということがこの年になって思い知らされたという方が正しいのだろう。そんなことより、私の眼はその大きな花に惹きつけられていた。

 タイサンボクの花は既に記したことがあるが、大抵花は木の上の方にあって、下からは見えにくい。だが、このタイサンボクの花はうまい具合に枝の下の方にも咲いていてくれて、大きな花をよく見ることができた。大きな木は大きな花をつけるという規則があるかのように、見事で堂々とした花が幾つも咲いていて、お蔭で検査前の憂鬱な気持ちをリラックスすることができた。

 さて、タイサンボク(泰山木)はモクレン科の常緑高木。その名前からして中国原産と思ってしまうが、アメリカ南部原産。葉の表面には光沢があり、裏面は毛が密生していて、錆色に見える。日本では公園樹としてよく植栽される。タイサンボクはアメリカ南部を象徴する花木で、ミシシッピ州ルイジアナ州の州花である。タイサンボクは明治初期に日本へ持ち込まれたが、原産地が高温多湿の亜熱帯で、湿度の高い日本の夏に適応できた。花の後にできる実はコブシのように袋果(熟すと果皮が自然に裂けて種子を放出する)の集合果である(画像は花の後の若い果実)。

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