コスモスらしいコスモスとは?

 昨日の「晩秋のコスモス」ではオオハルシャギクの「レッド・イル―ジョン」とビデンスを紹介した。どちらも所謂コスモス(秋桜)とは違っている。色んなコスモスがある訳で、それは何も花に限られない。

 space と universe は両方とも「宇宙」を指すが、space は地球の大気圏より外の空間、universe は地球を含めた万物。space は人の生活世界の常識概念であり、universe は物理世界の科学概念。cosmosは円運動からなる秩序あるシステムとしての宇宙で、chaos(混沌)の対義語。

 こんな字句談義を前提に、レッド・イル―ジョン、ウインター・コスモス、普通のコスモスをコスモスの具体例に見立てて、コスモスとはどのようなシステムなのか考えてみるのも面白いのではないか。

 

晩秋のコスモス

 コスモス(秋桜)という名前がすっかり定着したのがオオハルシャギク(大春車菊、大波斯菊)で、キク科コスモス属の一年草、メキシコ原産です。17世紀にヨーロッパに、日本には明治初頭に渡来しました。

 コスモスは秋を代表する短日植物ですが、最近では日の長短に関係なく開花する品種もつくられています。花心に小さな花弁がつくのが「レッドイリュージョン」で、白い花弁の縁が濃いピンクに染まります。その花は冷たい雨の中で少々寂しげです。

 一方、雨などまるで気にしないのがウインター・コスモス、あるいはビデンス。ビデンスはメキシコ原産のキク科センダングサ属の植物。繁殖力が強く、日本の道端でも雑草として生えています。風に吹かれている姿は確かに小さめのコスモスです。

 

クスノキの黒い実

 クスノキ(樟、楠)はクスノキ科ニッケイ属の常緑高木。花の後にできる緑色の実は11月には黒紫色に熟します(画像)。中には種が一粒入っていて、ムクドリやカラスなどが食べます。人には樟脳のような香りがあって美味しくありませんが、小鳥たちには好物で、種が遠くまで運ばれます。

 針葉樹といえば、スギ、マツ、ヒノキですが、常緑の広葉樹はシイ、カシ、落葉の広葉樹はブナ、ナラが代表例です。東日本の広葉樹の代表は落葉のケヤキで、私の育った家には大きなケヤキの木が二本ありました。今の湾岸地域には西日本の広葉樹と言われるクスノキがたくさん植えられています。クスノキはトトロで有名になりましたが、私の好きな大木の一つです。特に、黒い実がたくさんついたクスノキを見上げるのが大好きです。

 

コブシの芽やつぼみ

 コブシはモクレンモクレン属、その名は果実の集合体が「拳」に似ていることに由来。早春に白い花を咲かせ、葉が大きくて木陰を作りやすいため、湾岸地域でも街路樹や公園樹として利用されている。

 コブシのグロテスクな実は既に落ちたが、その実ができた頃にはネコヤナギに似た新芽が出て、青葉の中で共存していた。コブシは花が美しいだけではなく、実も芽も面白い。

 コブシは開花する前に、つぼみの先端を一斉にいっせいに北の方に向けることがある。これはハクモクレンやネコヤナギも同様で、日のよく当たる南側に面したツボミの付け根付近の組織が、北側の組織よりもよく成長し、結果として先端が北側に傾くために起きる(植物のある部分が特定の方角を示すものが方向指標植物)。

 そのような能書きは横に置き、これからくる冬への備えのようなコブシの芽やつぼみはネコヤナギの花穂を連想させます。

*「芽、つぼみ、花穂」の区別

今のコブシ

9月のコブシ

9月のコブシ

 

セイヨウヒイラギの赤い実

 少し前にヒイラギモクセイ、ヒイラギについて記した。花の少ない11月にヒイラギは芳香のある可愛らしい白い花をつける。実は年を越して翌年に黒紫色に色づく。

 セイヨウヒイラギはモチノキ科モチノキ属の常緑小高木で、深緑色の艶のある葉の縁には鋭いトゲがある。淡黄色に咲く花に香りはほとんどなく、赤い実をつける(画像)。セイヨウヒイラギは魔力があると信じられていて、クリスマスの飾り付けに用いられる。

 一方、日本のヒイラギ(柊)はモクセイ科モクセイ属で、やはり神の力が宿る「神聖な木」とされ、邪鬼祓いや魔除けのおまじないに使われてきた。棘のある葉に目を刺されて鬼がおっぱらわれた説話が邪鬼祓いの由来。

 ヒイラギモチもモチノキ科モチノキ属だが、セイヨウヒイラギと違い、成木でも比較的長く棘を保つ。日本ではヒイラギモチがクリスマスの飾りに使われる。ヒイラギモチは東アジアが生息地で、シナヒイラギ(英語では「チャイニーズホーリー」)と呼ばれる。

キンモクセイ、ヒイラギモクセイ、ヒイラギ、セイヨウヒイラギ、さらに、その近辺の植物についてはいずれしっかり系統関係をまとめてみたい。

セイヨウヒイラギ

ヒイラギモチ

 

ノースポールの白い花

 ノースポール、あるいはカンシロギク(寒白菊)はキク科フランスギク属の半耐寒性多年草。開花期は11~5月と長く、寒さに強く、暖かい地域では簡単に冬越しできる。

 花はキク科特有の構造をもち、中心の黄色い部分は雄しべと雌しべから成る管状花、周囲は白い花びらと雌しべから成る舌状花。原産は北アフリカやヨーロッパ。

 ノースポールは径3cmほどで、中心が黄色の白い小ギクで、花期が長く、育てやすい。冬から初夏まで花を楽しむことができる。

 

シナアブラギリの実

 シナアブラギリ(支那油桐)はトウダイグサ科アブラギリ属の落葉高木。中国原産で、アブラギリほど多くはなく、野生化している。高さは10~12m、樹皮は灰褐色でなめらか、枝は太くて無毛、はじめ緑色で、のちに暗褐色になる。

 実は堅果で、直径3~4.5cmの球形で溝はなく、先端が急にとがり、10~11月に熟すが、裂開しない(画像)。中には種子が4~5個入る。

 種子から得られる油は「桐油」として広く利用される。優良な乾性油で、現在でも中国から輸入され、塗料など広汎に利用されている。

 画像はまだ青々しい実、11月の色づいた実である。