「住みよさランキング2018」の結果をどう使うか?

 25回目の発表となる「住みよさランキング」は、公的統計を使って、それぞれの市区が持つ都市力を、「安心度」、「利便度」、「快適度」、「富裕度」、「住居水準充実度」の5つの項目に分類し、16の統計指標を使って算出したもの。指標ごとに、平均値を50とする偏差値を算出し、それらの単純平均から総合評価が出されている。今回は一部指標の追加、変更があり、ランキングに変動があった。
 総合評価の全国1位は印西市(千葉)で、2012年から7年連続のトップ。2位は名古屋市ベッドタウン長久手市(愛知)で、昨年の3位から順位を1つ上げた。3位の名取市(宮城)は広域仙台都市圏の副拠点都市で、昨年11位から一気にトップ3入りを果たした。新潟県内でトップの妙高市だが、昨年の18位から125位へ順位を大きく下げた。住居水準充実度、安心度で評価が高かったが、快適度、富裕度が低かったためである。上越市は昨年の県内2位から3位に順位を下げた。妙高市と同じく住居水準充実度や安心度が高く、快適度、富裕度が低かった。全国順位は昨年の74位から152位に下がった。
 全814市区のランキングは、6月20日に発売された「都市データパック2018年版」(6480円)に掲載されている。新潟県内順位は次の通り。
妙高市柏崎市上越市胎内市見附市長岡市小千谷市新潟市阿賀野市 ⑩十日町市新発田市南魚沼市燕市糸魚川市村上市三条市五泉市佐渡市魚沼市加茂市
 今年から「利便度」に飲食料品小売事業所数や、「安心度」に0 歳から14 歳までの人口増減率が評価項目に加えられたことによって、コンビニ店やスーパーの数が多い大都市の方が高い数値が算出され、妙高市は順位を落とすことになった。安心度では前年まで算出指標としていた「0~4歳人口当たり保育施設定員数」を除外し、新たに「年少人口(0~14歳人口)増減率(3年前比)」が算出指標に加えられた。また、利便度では新たに「可住地面積当たり飲食料品小売事業所数」が算出指標に加えられた。下表から明らかなように、安心度の算出指標の変更が妙高市の順位変化を引き起こしている。

                     総合 安心度 利便度 快適度 富裕度 住宅水準充実度
妙高市2018  125     206     317      678      514           10
妙高市2017   18       47      238      667      366           10
柏崎市2018  148     383     424      367      228         192
上越市2018  152     216     306      488      341         173

<ランキング内容の解説>
 住みよさランキングとは、東洋経済が全国の 814 市と東京 23 区を対象に、「安心度」、「利便度」、「快適度」、「富裕度」、「住居水準充実度」の 5 つの観点から16 の統計データを参照して平均値を 50 とする偏差値を算出し、ランキング化したもの。住みよさを決める大きな5項目について、公的統計データの中から各項目の対象となりそうなデータを使って算出したもの。
 安心度は、下記4つの統計データの平均値を偏差値で算出したもの。
(1)病院・一般診療所病床数(人口当たり)
(2)介護老人福祉施設・介護老人保健施設定員数(65 歳以上人口当たり)
(3)出生数(15~49 歳女性人口当たり)
(4)年少人口(0~14 歳人口)増減率
人口あたりの病院が足りていて、福祉や介護施設も整い、子作りも盛んで、若者が結構いるということである。
 利便度は、次の統計データの平均値を偏差値で算出したもの。
(5)小売業年間商品販売額(人口当たり)
(6)大型小売店店舗面積(人口当たり)
(7)飲食料品小売事業所数(可住地面積当たり)
買い物しやすく、買い物する選択肢もあるということである。
 快適度は、次の統計データの平均値を偏差値で算出したもの。
(8)汚水処理人口普及率
(9)都市公園面積(人口当たり)
(10)転入・転出人口比率
(11)新設住宅着工戸数(世帯当たり)
汚水処理、公園が整い、人口が増え、新しい家が建てられている。
 富裕度は、次の統計データの平均値を偏差値で算出したもの。
(12)財政力指数
(13)地方税収入額(人口当たり)
(14)課税対象所得額(納税者義務者 1 人当たり)
自治体に十分なお金があり、市民が収めてる税金も多く、一人あたりの所得も多い。
 住居水準充実度は、次の統計データの平均値を偏差値で算出したもの。
(15)住宅延べ床面積(1住宅当たり)
(16)持ち家世帯比率
各家が十分に広く、持ち家の世帯が多い。

 「住みよさランキング」の結果に一喜一憂するのではなく、その結果を巧みに活用する方がいいのではないか。むしろ、それを行うのがこのランキングのもつ意味なのである。各項目はどれももっともな項目なのだが、誰もすべての項目が不可欠とは思っていない。年齢、家族、仕事等によって大切で、必要な項目、既に不用な項目と言った具合に、どの項目がどれだけ重要かは分脈、状況、環境に応じて変わる。それゆえ、総合ランキングは普遍的な「総合人」がいないのであれば、単なる数字上のランキングに過ぎないことになるだろう。
 統計は数字の魔術で、どれかの項目の算定方法を変えると、結果が大きく変わるものである。だから、これらデータを賢く使うには、算定項目の選択、付加する項目などを工夫し、それぞれの地域に適した独自の項目をつくり、どんな都市にしたいかに応じてデータを使い分けることが大切なのである。
 既に4半世紀の統計データの蓄積があり、それらを眺め直すことによって、これまでの日本の都市の変遷を垣間見ることができる。これは見事な歴史データである。その遺産の分析は日本の都市の貴重な変遷を教えてくれる。データは総花的に項目が加えられており、発表される結果は誰にも便利な理想的都市像の順位となっている。だから、それぞれの都市や人々に関心ある項目だけを使った独自のデータを作り直し、それを目標に掲げることは容易に想像できる。特色ある個性的な順位をこのデータを使って抽出し、それを目安にそれぞれの都市の将来の目標設定も可能となるだろう。
 データから結果を見るのではなく、目標からデータを見つめ直すなら、データについての全く異なる見方ができるだろう。それを教えてくれるのが「住みよさランキング」なのである。
*私は妙高市出身なので、妙高市の結果を中心にデータを見たが、読者諸氏は自ら住む都市について考えてみてほしい。