ユリカモメ、そしてウミネコ

 隅田川は川も川辺もすっかり変わった。水は綺麗になり、川辺はテラスと呼ぶにふさわしい遊歩道に変身した。だが、ユリカモメ (百合鴎)は変わらない。『伊勢物語』に登場する「都鳥」は、今ミヤコドリと呼ばれている鳥ではなく、ユリカモメだとする説が有力である。『伊勢物語』の「九段 東下り」は次のように記す。

 

なほゆきゆきて、武蔵の国と下つ総の国との中に、いと大きなる河あり。それをすみだ河といふ。(中略)さるをりしも、白き鳥の嘴と脚と赤き、しぎの大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。

 

 このように、「都鳥」は「墨(隅)田川にいる鳥で、体が白く、嘴と脚が赤い、シギ程度の大きさ、魚を食べる水鳥」とされているが、この条件を満たす鳥がユリカモメ。そのため、「都鳥=ユリカモメ」と推定されている。全長40cmほどの冬鳥として、全国の河、河口、湖沼、海岸の水辺に飛来する。在原業平和泉式部の和歌にも「都鳥」として登場し、東京都の鳥に指定されている。

 ユリカモメはカモメの一種で、10月下旬から11月上旬にシベリアやカムチャッカから渡来し、4月頃まで東京湾隅田川多摩川などで群れをなしている。ユリカモメは何でも食べるたくましさをもち、東京都のゴミ捨て場だった夢の島にも沢山いた。入江のカモメ、つまり「イリエカモメ」が「ユリカモメ」に転じたとされている。

 「東京臨海新交通臨海線」と言われてもピンとこないが、愛称の「ユリカモメ」となれば大抵の人が知っていて、子供たちには本家のユリカモメより知名度が高い。そんなことを想いながら、有明西埠頭を歩くと、大きな海鳥が見える。警戒心が薄いのか、近づいても逃げる気配がなく、ゆっくり動くだけ。素人の私に咄嗟に思い浮んだのが「ユリカモメ」。なにしろ、すぐ近くに「ゆりかもめ」の車両基地がある。慎重に画像の鳥が何かを見極めようとすると、これが意外に厄介なのだが、それもまたなかなか楽しい。その結果、ユリカモメとよく似ているウミネコと判明。ウミネコも、カモメと同じカモメ属の鳥。ウミネコはカモメより少し大きめ。その鳴き声が「ミャーミャー」とネコに似ていることが名前の由来で、漢字では「海猫」。

 さて、私が見た鳥は幼鳥らしく、そのため動きが緩慢だったのだろう。カモメとウミネコはよく似ているが、一番の違いはカモメが冬の渡り鳥であるのに対して、ウミネコ留鳥で、1年中姿を見ることができる。画像は幼羽から第1回の冬羽に変わろうとしている姿と思われる(画像は10月末のもの)。ウミネコは生後3年ほどかけて成鳥になる。

ユリカモメ

ウミネコ