シコンノボタンの花たち

 「シコンノボタン」と聞くと、「紫紺の牡丹」でもあり、「紫紺野牡丹」でもある。誰もが迷うが、正解は「紫紺野牡丹」。つまり、紫紺色の野牡丹である。「赤の薔薇」なのか「赤野薔薇」なのかに似ているが、多様な赤色をもつバラには、「赤の薔薇」、「赤野薔薇」という表現はどちらも正確とは思えない。

 明大のスクールカラーである紫紺(しこん)は、紺色がかった暗めの紫色。その紫色は幅があり、京紫から江戸紫までを優に含み、しかも変化する。紫紺の「ノボタン」はノボタン科ティボウキナ属(和名シコンノボタン属)の常緑低木で、その紫紺色は独特。

 中南米原産のシコンノボタンは紫紺色の大輪の花が美しく、いつまで見ていても見飽きない妖艶な雰囲気の花。色と形が一緒になって眼に飛び込んできて、美を享楽する時間を与えてくれる。私は一輪のシコンノボタンの花の見事さに惚れ惚れするのだが、それが木全体に満開となると、少々印象が違ってくる。画像のようにうるさい程に花が多いと、一輪の妖しさは消えてしまう。何とも贅沢な不満である。