感染症の流行予測

 小学生の和夫君のまとめは、次のようなものでした。R0が1より大きいと世代のサイズが拡大再生産していきます。そのときには感染者人口の成長率が正になって流行が拡大していき、逆にR0が1より小さかったら、流行は自然に消滅します。R0 が1より大きければ流行が起きますが、1より小さければ流行は起きません。ですから、彼は兎に角感染者を見つけて、隔離するしかないと結論しました。これを聞いた高校2年生の和子さんはもう少しこの内容をはっきりさせようと思いました。

 感染症の流行を予測するにはSIRモデルやSEIRモデルなどの数値モデルが使われることを彼女は知りました。S、 E、 I、 Rとは以下の4つの英語の頭文字です。


・Susceptible: 感染症に対して免疫を持たない者(無免疫者)
・Exposed: 感染症が潜伏期間中の者(感染者)
・Infected: 発症者
・Recovered: 感染症から回復して免疫をもった者(回復者)

 

そして、彼女はこれらの間に次のような関係があると直感したのです。

(1)一定期間ごとに免疫をもたない未感染者がβの割合で感染する

(2)感染者がγの割合で回復する

上の(1)、(2)から「無免疫者→β→感染→γ→回復」となり、記号で表現すれば「S→β→I→γ→R」となります。

 

・無免疫者数の変化=-感染する比率×発症者数×感染者数

・感染者数の変化=感染する比率×発症者数×感染者数-回復する比率×感染者数

・回復者の変化=回復する比率×感染者数

 

これをさらに詳しく表現したのが次のような関係です。

・無免疫者数の変化=-感染する比率×発症者数×感染者数

・感染者数の変化=感染する比率×発症者数×感染者数-感染者数/潜伏期間

・発症者数の変化=感染者数/潜伏期間-発症者数/感染期間

・回復者数の変化=発症者数/感染期間

 

 和子さんの先輩で、大学生の和さんはそれぞれの関係を二つの組の微分方程式のモデルとして表現できることを知っていました。最初のものはSIRモデル、次のものはSEIRモデルと呼ばれているものです。残念ながら、個々では表現できませんので、これらモデルの表現と具体的な取り扱いはhttps://rpubs.com/ktgrstsh/tokyor84を参照して下さい。基本的な説明も簡単に検索できます。

 3月10日に北大の西浦博教授による感染防止策がない場合の発症率、入院率、重症化率などが示されました。人口10万人で8987人が発症、1782人が入院、178人が重症化。65歳以上だと、2765人発症、577人が重症化。発症から3か月でピークになり、終息は3か月後。これに先立ち、3月6日の各保健所設置市 衛生主管部(局)への厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部からの「新型コロナウイルスの患者数が大幅に増えたときに備えた 医療提供体制等の検討について(依頼)」(このタイトルで検索すれば見つかる)で「国内で患者数が大幅に増えたときに備えた医療提供体の確保について」がつけられています。そこに計算式が何の説明もなしに出てきます。マスコミがこの式の説明を省くのはわかるのですが、通知の文書に何もないのは親切ではありません。とはいえ、既に11日には各都道府県の数値が出て、医療崩壊と結びつけられて話題になっています。