二つの映画

 40年近く前アメリカ数学会のサマースクールがイサカのコーネル大学でおよそ1か月間開かれ、それに応募したらOKが出て、8月をコーネルで過ごしたことがあった。昼の講義はいずれも刺激的だったのだが、数学基礎論が専門ではない私には理解するのが大変だった。夜は何もなく、一人身の私にはコーネルのキャンパスで映画を観るくらいしか娯楽はなかった。真夏に観た「ドクトル・ジバゴ」は雪や氷の美しさを今でもよく憶えていて、「ララのテーマ」はコーネルを連想させるのである。サマースクールが終わり、キャンパスを下ってイサカの町に出て、小さな映画館に入った。そこで上映されていたのが何とあの「E.T.」で、それが評判を呼ぶことになる映画だとは露ほども知らなかった。イサカ最後の夜はこの映画に心奪われ、キャンパスに戻る急な坂道も一向に苦にならなかった。

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 どちらの映画も私の生活からは程遠い内容で、荒唐無稽と思われなくもないのだが、だからこそ気楽に感情移入ができ、日常生活では経験できない不思議な感情をもつことができるのかも知れない。