野生化したバーベナの復帰

 湾岸地域の空き地や路傍でいつも夏にお目にかかるのがヤナギハナガサやアレチハナガサ。どう見ても野生の雑草にしか見えない。二つの区別は茎が中実だとアレチハナガサ、中空だとヤナギハナガサだとわかり、胸のつかえが下りたのだが、バーベナの栽培種が野生化し、アレチハナガサ、ヤナギハナガサ、そしてダキバアレチハナガサが生まれたというのが進化の歴史だと知り、びっくり仰天。

 ヤナギハナガサは、アレチハナガサを園芸種として改良した植物という印象があるのだが、実際はどちらも観賞用として持ち込まれた帰化植物だった。どちらも南米原産の外来種で、名前が似ているだけでなく、その姿もよく似ている。花が咲くと、ヤナギハナガサの方が鮮やかな小さい花をたくさんつけるが、アレチハナガサの花はうす紫色で花数が少なく目立たない。

 ヤナギハナガサはクマツヅラ科クマツヅラ属の多年草で、サンジャクバーベナとも呼ばれる。ヤナギハナガサは宿根バーベナの一種で、元々は観賞用に栽培されていたものが、虫害や気温差に強いというその頑健な性質から空き地や道端などでなかば野生化した。それが、最近は公園の花壇に復帰し、野性味を残したまま、再度園芸種として人気が高まっている。人の好みは彼らの運命を操ってきたようで、申し訳ない気がしないでもない。

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左ダキバアレチハナガサ、右アレチハナガサ

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ヤナギハナガサ

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クロバサトイモ

 ジャガイモもサツマイモも嫌いではなかった私はサトイモが大嫌いだった。サトイモの大きな葉を見ただけでも嫌でならなかった。そんな私でも大人になり、齢を重ねるにつれ、サトイモが好きになり出し、今では大好物の一つになっている。そんな私がサトイモらしき大きな葉を公園の花壇に見つけ、嬉しい驚きを味わった。

 黒葉のサトイモはブラック・マジック、あるいはブラック・ランナーと呼ばれ、サトイモ科コロカシア属。新しく出てくる葉は初め緑色をしているが、葉が展開して数日すると黒くなる品種。生育が良ければ、80cm程度までなるらしい。

 この葉が畑一面にあったなら、どのような景色になるのか、想像するだけでも愉快な気持ちになるのだが…

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イギリス問題

 パンデミックの最中にワクチン接種によってイギリス政府はその戦略を大胆に変えました。でも、感染が急拡大している時に大規模緩和や自由を認めるのは時期尚早と批判する声は小さくありません。制御のない状態で感染爆発のピークがどれぐらい続くのかまだ実際には誰も見たことがありません。というのも、これまでイギリスは感染拡大に対してロックダウン(都市封鎖)を実施してきたからです。

 正直なところ、7月19日以降に何が起きるのかは誰にも分かりません。人々がどう行動するか、その正確な予測は厄介です。今後2週間で感染者が倍になれば、危険水域に突入することになります。そうなれば、政府は何をするか考え、決めなければなりません。

 兎に角、ワクチン2回接種による「免疫の壁」を試すイギリスの実験が始まりました。感染者数の増加率に比べると、まだ増えていない入院患者数と死者数がこれからどこまで増えるのか予断を許さないのです。

 ある程度の死者数を想定し、それを認めるイギリスの手法は冷静な科学的判断なのか、それとも悪魔の判断なのでしょうか。救える命を見殺しにすることになりますから、倫理的ではないと判断されるのがこれまでの常識でしょう。

 集団生物学的に有効なイギリスの戦略は反倫理的なのでしょうか。これがイギリス問題であり、答えを出すにはもっと実証実験が必要なのですが、その実験さえ反倫理的なところにイギリス問題の核心があり、それは生命倫理の中心課題の一つなのです。

サルスベリの花

 湾岸地域にはサルスベリ百日紅、猿滑)の木が多い。公園だけでなく、大きな通りの街路樹としても数多く植えられ、それらが今咲き出している。色も赤、ピンク、白と賑やかである。花が美しく、耐病性もあり、必要以上に大きくならないためか、人々に好まれるようである。また、最近は矮性の園芸種も多く、それらもあちこちで咲いている。

 和名のサルスベリは、古い樹皮のコルク層が剥がれ落ち、新しいすべすべした感触の樹皮が表面に現れて更新していき、サルが登ろうとしても、滑ってしまうことから、命名された。サルスベリは中国南部を原産とするミソハギサルスベリ属の落葉高木。梅雨明けから初秋までの長い期間に渡って花を楽しむことができるため「百日紅(ヒャクジッコウ)」という別名があるが、実際の花期は2か月ほど。

 日本へ渡来したのは元禄年間以前。幹の表面が日本で沙羅の木とされているヒメシャラやナツツバキに似ているため、当初は主に寺院に植栽された。確かに、子供の頃のサルスベリの記憶は家の近くの寺院の木だった。

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生存戦略

 7月15日のイギリスの感染者は約5万人。日本とは比べようもない程多いのだが、イギリス政府は規制解除の考えを変えなかった。解除後の新規感染者数は一日あたり10万人に達する可能性があるが、それでも政府は許容範囲内と考えている。ジョンソン首相は19日の規制解除について「今やらないのならいつやるのか、今しかないだろう」と述べ、経済的理由の他に、インフルエンザが流行する秋までに、コロナ感染のピークを作ってしまおうという戦略を持っていた。ワクチン接種と感染拡大による集団免疫の確立がジョンソン首相の狙いである。これはイギリス政府がコロナとの共生を決断し、 コロナを特別扱いしないという宣言でもある。 だが、世論調査を見ても「早すぎる」という人が約7割いる。

 集団生物学的な観点から、ワクチン接種が進めば、入院し重症化する感染者は極端に減り、感染者が増えても医療への圧迫がないだけでなく、社会生活にも大きな支障は出ない。さらに、夏場に感染を増大させ、集団免疫をより強固なものにすれば、より危険な冬場の流行は起こらない筈である。コロナウイルス生存戦略に打つ勝つためにはイギリス政府の集団生物学的戦略が有効であることは確かに頷ける面を持っている。そして、これが個人の生命を基本にした医療倫理を凌駕するかのようなイギリス政府の戦略である。しかし、この戦略に基づく規制解除の政策は元上級顧問や野党から批判され、四面楚歌の状態にある。

 宝くじの販売を促進しようと、外れくじを極力減らし、くじの販売を高める戦略は誰にも妥当なものに映るのではないか。年末に出るより強力なくじの前に夏場に出るくじを早急に販売し、利益を得ることは至極当たり前のことである。ジョンソン首相の政策もこれとよく似ていて、外れくじをワクチン接種で極力減らせるのであれば、誰も躊躇なく宝くじの販売に賛成できるだろう。

 では、宝くじの販売とジョンソン政策の何が違うのだろうか。戦略は同じ構図になっていても、私たちが違うと直感するのは一方が利益、他方が生命に関わっていることだろう。感染者数の増減ではなく、その数が莫大になれば、いくら重症者や死亡者の数の割合が低くても、やはり絶対数は途方もなく大きくなり、そこに生命倫理が頭をもたげてくる。経済と生命をどのように天秤にかけるか、やはりこれまでの様々な生存戦略を再度詳しく精査する必要があるだろう。

ナツズイセンの花

 ナツズイセン(夏水仙)はヒガンバナ科の有毒の多年草。春にスイセンに似た葉を伸ばすが、夏には枯れる。葉が枯れた後に、花茎を伸ばして、ラッパ状の花を数個つける(画像)。花は、淡紅紫色で花びらは反り返り、目立つ茎は太く、花は彼岸花に似ているが、彼岸花より先に咲く。その名前は葉がスイセンに似ていて、花が夏咲くことから。また、花期に葉がなく、そのためハダカユリ(裸百合)とも呼ばれる。原産地は中国で、古くに渡来した帰化植物と考えられている。

 現在自然界にあるのは栽培ものの逸出。開花時期に葉がなく、花茎のみが伸び、頂上で複数の花を咲かせる性質はまさにヒガンバナの仲間だが、ラッパ形の花は小振りなユリのようでもある。花色はかわいらしいやや淡いピンク色で、そこに薄い青色が微かについて、水彩画を思わせる。草丈は人の膝(ひざ)上くらい。

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