すっかり葉の落ちた細い枝に大きな実がついている。とても不自然で、こんなことが生物の世界で許されるのかと訝るほどのアンバランスな大きさで、とても気になってしまった。かつて紹介したシシユズ(獅子柚子)がとても大きくグロテスクな実をつけるのに似ていなくもないが、画像の実もそれに匹敵するほどなのである。
その実の正体はボケ(木瓜)。ボケはバラ科ボケ属の落葉低木。実が瓜に似ていて、木になる瓜で「木瓜(もけ)」と呼ばれたものが「ぼけ」になったとも、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」になったともいわれている。カリンとマルメロの実を見分けるのは厄介だが、それらによく似たボケの実を加えると、三つ巴でさらに厄介になる。カリンともちょっと違う気がするし、かと言ってマルメロでもなさそう…そのアンバランスな実を調べていくと、ボケの実だとわかった。ボケの実は生で食べることはできないが、果実酒やジャムになる。これもカリンやマルメロに似ている。色は黄緑色で硬さや匂いはカリンに似ている。
ボケは平安時代に中国から渡来した植物で、『本草和名』や『和名類聚抄』には和名として「毛介(もけ)」が紹介されている。今の中国の「木瓜」はパパイヤを指している。カリンはもともとその実を薬用にするために導入されたが、実際の栽培はもっぱら鑑賞用で、様々の園芸種ができている。ついでながら、諏訪のカリンの砂糖漬けはマルメロの実が原料。