「みすゞコスモス」追記

 金子みすゞは1903(明治36)年山口県大津郡仙崎村(現長門市仙崎)に生まれました。大正後期に童謡詩人と呼ばれ、どの作品からも優しさに貫かれた「一視同仁」の独特の宇宙が滲み出ます。みすゞは23歳で結婚し、娘を授かりますが、4年で離婚。みすゞは親権を要求しますが、受け入れられず、そのため、1ヶ月後に娘を自分の母に託すことを求めた遺書を残し、服毒自殺します。とても短い一生でしたが、その詩は恐ろしい程に哲学的な優しさ、美しさに満たされています。

(矢崎 節夫、『みすゞコスモス―わが内なる宇宙』1996、『みすゞコスモス〈2〉―いのちこだます宇宙』2001、JULA出版局)

 以下に金子みすゞの作品を二つ挙げます。

 

「星とたんぽぽ」

青いお空の底ふかく、

海の小石のそのように、

夜がくるまで沈んでる、

昼のお星は眼にみえぬ。

  見えぬけれどもあるんだよ、

  見えぬものでもあるんだよ。

 

散ってすがれたたんぽぽの、

瓦のすきに、だァまって、

春のくるまでかくれてる、

つよいその根は眼にみえぬ。

  見えぬけれどもあるんだよ、

  見えぬものでもあるんだよ。

 

「雀のかあさん」

子供が

子雀

つかまへた。

 

その子の

かあさん

笑つてた。

 

雀の

かあさん

それみてた。

 

お屋根で

鳴かずに

それ見てた。