今の私たちの姿

 マスクがない、PCR検査ができない、病床がない等々、無い無い尽くしの生活で、かつての戦中生活はこんなものだったのかと思う人も少なくないだろう。未だにマスクは手に入らないし、PCR検査数は首相や厚労相が言う数とは違って少ないままである。矢面に立つ保健所が一生懸命に検査をしているにも関わらず、検査数は一向に伸びない。マスクもPCR検査も同じような理由が浮かんでくる。マスクの生産、PCR検査の試薬を外国に頼ってきたこと、自前で行うには設備と人手が必要なことなどが挙げられる。

 感染者数が毎日知らされ、それに一喜一憂するのも、感染者の数が以後の医療体制そのものを決める重要な数値になっているから。2,3日で感染者数が2倍になり、それが続くことがオーバーシュートだが、PCR検査の数が制限されているなら、2倍、3倍と患者数が増えていくようなことは起こりようがない。上限9,000件の検査数なら、5,000人を越えての感染者数の劇的増加は検査数の制約からあり得ないことになる。つまり、実情を反映しない、誤った感染者数ということになり、オーバーシュートは原理上起こり得ないことになる。そんなことを数日前に述べ、そしてそんなバカなことはあり得ない筈なのだが、今の日本はそれが起こっておかしくない状況なのである。

 2日前のテレビで二人の国会議員が話していたのが実効再生産数。どうも二人は基本再生産数のことを話していたようなのだが、今の対策の基本にある数理モデルの基本概念を理解しているようには思えなかった。緊急事態宣言は流行を押さえ、医療崩壊を防ぐものだが、そのために実効再生産数を1未満にする対策である。実効再生産数は自粛の効果によって決まるのであり、私たちの介入によって私たちが変えるものである。接触の8割削減は実効再生産数を1未満にするための私たちの対策なのである。

 PCR検査だけでなく、治療システムに関しても今の日本は三流国。そんな中でコロナ対策は一流国の対策になっているのだろうか。自粛を軸にする特措法の立て付けはすこぶる使い勝手が良くない。保健所、地方衛生研、感染研のシステムだけに頼らず、地域の医師会を中心とした発熱外来、PCR検査、治療の仕分けのシステムを自治体と協力しながら、動かすことによってしか現状の打開はないだろう。医療崩壊を起こさないためには検査を含めて、医療システムの組み直ししかないだろう。コロナ対策の核心の一つは医療システムであり、今となっては台湾と韓国のシステムを見習うのが一番。緊急事態宣言を延長し、懸命に真似るのが賢明である。

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