ヤブツルアズキの花

 ヤブツルアズキ(藪蔓小豆、Vigna angularis var. nipponensis)はマメ科ササゲ属の蔓性の一年草で、茎は蔓になってあちこちに絡みつきながら伸びていきます。花はねじれたような形で、小葉は3枚ずつつき、先はとがります(画像)。茎や葉には茶色くやわらかい毛が生えています。

 古くから日本人は特別な「ハレ」の日と日常的な「ケ」の日を分けてきました。その「ハレ」の日、特に祝いの場に必ず登場するのが「小豆(あずき)」。赤飯やおはぎは「ハレ食」の代表格。平安時代には小豆粥(あずきがゆ)の記録があり、小豆は昔から縁起の良い日に食べられていて、既に縄文時代の遺跡から小豆の種子が数多く出土しています。私自身の記憶の中にも正月やお祭りの日の赤飯やぼた餅が強く残っています。

 現在、私たちが食べている小豆は栽培種です。栽培種があれば、当然その祖先となる野生種もあり、それが「ヤブツルアズキ」なのです。ヤブツルアズキは日本、朝鮮半島、中国からヒマラヤにかけて分布し、栽培種の小豆の起源(祖先野生種)と言われています。一般的な小豆と比べると莢(さや)が黒く、種子が小粒で、黒っぽいまだら模様をしていて、赤い小豆というイメージと随分異なります。種子を食べることができますが、種子が小粒なのと採集に手間がかかるため、ほとんど利用されていません。今は見向きもされていないヤブツルアズキですが、実はその味はなかなかのものらしいのです(私は食べたことがありません)。

 私がヤブツルアズキを見たのは全くの偶然で、最初はナガバハマササゲと思いました。花の形がねじれ、小葉は3枚ということから、ヤブツルアズキと特定したのですが、実がつき、種子がどうなるか、今から楽しみです。