夏の白いユリ 

 お盆の頃の花の代表の一つがユリであり、湾岸地域でも半ば野生化したユリがあちこちで咲いている。品種を特定しようとすると、これが意外に厄介で、私にはお手上げ状態が続いている。テッポウユリ(鉄砲百合)は日本固有のユリ。テッポウユリはラッパに似た花を横向きに咲かせるが、高さ50~100センチの多年草。花は白色で、花筒が長く花被片の先端が反り返る花を咲かせる。6本の雄しべは黄色で、花被より短く雌しべの先端の柱頭は丸く3裂している(画像)。シンテッポウユリタカサゴユリテッポウユリの交配によって日本で1951年に作られた園芸種。自然交雑を繰り返し、花被片は純白色のものが多く、今ではテッポウユリと見分けがつかなくなっている。

 老人には「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」が思い浮かび、「シャクヤクのように風情があり、牡丹のように華麗で、百合のように清楚」な女性を表現しているということになるのだが、今のユリたちは清楚だけでなく、より豊富で多様なメッセージを表現している。

 「純潔」というユリの花言葉ギリシア神話に由来する。ゼウスの妻で、結婚や母性、貞節を司る最高位の女神「ヘラ」のこぼれた乳が、地上でユリになったとされる。このことから、ユリはヘラの花とされ、古くから清純、純潔、母性の象徴とされてきた。さらに、ユリはキリスト教と関わりが深く、レオナルド・ダ・ヴィンチの「受胎告知」にもユリが描かれている。日本からテッポウユリがヨーロッパに渡ると、それまでの「白いユリ」から区別するために「マドンナリリー」と呼ばれるようになる。マドンナリリーは聖母マリアの象徴となり、教会花として用いられてきた。そして、バチカン市国の国花となっている。