花言葉とバラ

 花について調べていると、花言葉がよく出てきます。そこには花への人の思い入れや望みが溢れていますが、時には迷信や誤謬の塊でもあり、とても人間的なものです。

その人間的な花言葉の発祥は17世紀頃のトルコらしい。花に思いを託して恋人に贈る風習がトルコにあり、それがヨーロッパに広がり、各国でその花のイメージからそれぞれの国に独特な花言葉ができました。

  1819年フランスのシャルロット・ド・ラトゥールが書いたLe Langage des Fleurs(『花言葉』)が評判となり、フランスで大ブームを起こし、それがヨーロッパ中に広がり、日本にも伝わりました。ラトゥールは独自の花言葉をリストにまとめました。彼女は花の観察と花の文化の両方を重視しました。

 ラトゥールは花の中でもバラに重要な位置を与えました。バラは「花の中の花」と称されるほどヨーロッパで重視されてきた花で、伝承や神話が豊富でした。ヨーロッパの伝統では赤いバラは勝ち誇る美と愛欲を象徴するだけでなく、現世の諸行無常も象徴しています。 日本に花言葉が「輸入」されたのは19世紀末の明治初期。当初は、輸入された花言葉をそのまま使っていましたが、やがて日本人の風習や歴史に合わせて日本独自の花言葉がつくられていきます。

 バラの花は代表的な園芸品種としてこれからも進化していくのでしょうが、花言葉の変遷はバラの生物学的な進化とはまるで別物です。でも、人はその二つを敢えて混淆するのが好きなようです。人は科学的にも、文化的にも花への「介入」が好きなのです。

*例えば「花言葉辞典(事典)」で検索すれば、個々の花の花言葉を知ることができます。赤いバラと白いバラの花言葉を比べてみるのも一興です。