何とも人間的なチューリップ

 今年もまたこれまで見たことのないチューリップの花が登場していて、私の好奇心をそれなりに満たしてくれるのだが、新しいチューリップの出現は自然現象というより社会現象である。画像の三つの園芸種を見れば、それらがnatural kindではなく、artifactであることを誰も疑わないだろう。

 16世紀末にオスマントルコよりヨーロッパにもたらされたチューリップの球根は富裕層の間で人気となり、高値で取引されるようになった。ところが、1637年2月市場から突然買い手がいなくなったことにより、チューリップのバブルが崩壊した。

 このバブルが引き金になって生まれたのが『黒いチューリップ』で、アレクサンドル・デュマ・ペール(大デュマ)による1850年の小説。17世紀のオランダで起きたチューリップ・バブルと、1672年のデ・ウィット兄弟の惨殺事件を題材に、多額の賞金が懸かった黒いチューリップを巡る陰謀と男女の愛が描かれている。

 ところで、今は黒いチューリップは存在し、濃いパープルといった色のクインオブナイト、 それより存在感の強いブラックヒーロー、縁の白いジャックポットなどが、黒いチューリップに数えられている。だが、今でも青いチューリップは自然界にはない。