狂い咲き、狂い生(な)り

 上野公園のサクラが何本も花をつけたのだから、キンシバイの花が咲いていても何の不思議もない。僅かとはいえ、我が家の周りのキンシバイは真冬以外は年中咲いている。花ではなく、野菜を考えるなら、キュウリ、トマト、ナスは「夏野菜」であり、私が子供の頃は冬には決して食べられなかったが、今ではどこでも年中食べることができる。野菜や花の命を操り、巧みに利用する人間は、季語が意味を失うことを憂える生き物でもあり、なかなか一筋縄ではいかない。

 「狂い生り」だった野菜がそうではなくなり、言葉の意味を失って随分経つが、「狂い咲き」はまだ生きていて、既述のサクラのように時々話題になる。そんな時、散歩中に出遭ったのがヤマブキの花。タンポポの花を冬に見ても驚かなくなったが、今時分のヤマブキは流石に珍しかった。さらに、遅れて咲いたキツネノマゴ(狐の孫)の花を見つけて、一瞬爽やかな気分になったのだが、老眼の焦点を絞ることができず、老いの寂しい気分も襲ってくる。花の根元に密集している細いガクのような穂が、狐の尻尾に似ているという説があるが、「狐の孫」の孫の意味は不明である。

キンシバイ

ヤマブキ

キツネノマゴ