キバラヘリカメムシは春から秋まで湾岸地域のマユミやニシキギに群生が見られ、成虫で越冬するというのが昨年までに私がわかったことでした。
昆虫には、チョウのように卵、幼虫、サナギ、成虫というように、幼虫時代と成虫時代では形態も行動もまるで変わるものがあり、「完全変態」と呼ばれます。例えば、イモムシとチョウは完全変態の例ですが、カメムシの仲間は「不完全変態」で成長します。劇的に変化するサナギ時代がなく、卵から孵化して1齢幼虫になり、5回脱皮を繰り返し、最後に羽化して成虫になるのがカメムシたちです。1齢から5齢までの幼虫は似ています。各齢で大きさ、色具合、模様などが変化しながらも、成虫の形態が翅と外部生殖器を除いて幼虫形態とほぼ同じで、しかも、幼虫と成虫の間に蛹を経ません。ですから、幼虫と成虫が混在する姿を見ることができます(画像)。自然の中の変化は千差万別ですが、脱皮と変態という成長変化は不連続の変化です。
さて、「匂い」ではなく、「臭い」と書かれるのがカメムシやクサギの臭い。カメムシの種類によっても異なりますが、悪臭の本体は不飽和のアルデヒド類で、最も臭気の強いのがクサギカメムシ(臭木椿象)で、クサギ(臭木)につくカメムシが名前の由来です。密閉した容器にカメムシとアリを入れ、分泌物を放出させるとアリは死に、ときにはカメムシ自身まで死にます。でも、キバラヘリカメムシはマユミやニシキギを食性としていて、このカメムシの匂いは臭くなく、青りんごや若草のような清々しい匂いです。
今年のキバラヘリカメムシの観察はマユミとニシキギに集まる幼虫と成虫で、交尾している姿も見ることができました。赤くなり出したマユミの実やニシキギの葉は秋の訪れを感じさせますが、そんな季節の変化の中に彼らの元気な姿を確認できました。とはいえ、幼虫が群がる姿は気持ちの良いものとはとても言えません。