木々の風景

 改めて木々の風景を眺め直すと、ドングリが随分と多種あって、しかも大量なのが湾岸地域の秋の風景の特徴であることに気づきます。私が子供の頃(昭和40年頃まで)の田舎の風景も木々の風景が田圃の風景と並んで支配的でした。今の私が住む湾岸地域の風景はビルや道路に占領されているとはいえ、それでも木々の風景を見ることができます。

 しかし、子供の頃の木々の風景と現在の木々の風景は随分と違った風景なのです。まず、子供の頃に多かった落葉樹が姿を消し、ほとんどが常緑樹です。理由は明白で、管理が簡単だからです。次は果実がドングリばかりになったことです。クルミやクリがたくさんあった子供時代に比べると、すぐには食べられない果実ばかりです。カキはどこにもなく、イチジクが僅かに見られる程度で、何とも味気ありません。これでは木登りしたくなりません。最後はスギです。かつては里山だけでなく、裏庭にも植えられていたのですが、湾岸地域ではどこにも見当たりません。

 子供の頃と現在の木々の風景は随分と違っています。いずれが本物かと問いたくなるのが人の常ですが、どちらも実は似たり寄ったりなのです。人が住む場所の風景は人がつくったものに過ぎず、人の選択の結果に過ぎません。花々の風景はそれをもっと端的に示してくれます。とはいえ、木々と花々では風景の違いも違っている筈で、自然の風景は社会の風景と融合し、何とも複雑怪奇です。