アオスジアゲハ

 黒地に鮮やかなブルーの紋様が翅を走り、付け根付近と後翅の下の方に赤が入るアオスジアゲハ。飛翔力が高く、早いスピードで樹木や花のまわりを巧みに飛び回る。オスは、湿った地面で吸水することも多い。今年はセミが少ないが、アオスジアゲハが目立つ。幼虫はクスノキを食べるので、クスノキの多い湾岸地域ではよく見ることができる。

 このクスノキの葉を揉めば、薬臭い強い香りがする。この匂いの主成分が「樟脳」。なんとも懐かしい名前だが、クスノキの枝葉を水蒸気蒸留すると大量に得られることから、昔は「防虫剤」として広く使われていた。

 アオスジアゲハの幼虫は「防虫剤」の匂いのする葉っぱを好んで食べる。他の虫たちが嫌う樹の葉を食べるように進化したことによって、食べ物をめぐる競争を避けることができた。確かにそれはアオスジアゲハの巧みな適応を説明してくれるが、今年急に個体数が増えたことの説明にはならない。というのも、今年湾岸地域で格段にクスノキが増えたわけではないからである。