久し振りの海王丸

 有明西埠頭に停泊している海王丸を久し振りに見た。天に伸びるマストなど、その姿は他の船にはない帆船の特徴を誇示し、眩しい。雲とマストの組み合わせが何とも絶妙。そして、見ているのが私だけという独り占めも、これまた至福の瞬間ということか。

 日本丸は晴海埠頭に停泊するのだが、海王丸有明西埠頭に来ることが多い。そのためか、私は有明西埠頭で日本丸を見たことがない。遠目には二つの船は見分けがつかないほどよく似ている。どちらも練習船で、大きな外観上の違いとなれば、「日本丸」の船首像は「藍青(らんじょう)で女神が合掌し、「海王丸」の船首像は「紺青(こんじょう)」で女神が笛を奏でている。

 戦後生まれの私だが、海王丸を見ると「海行かば」のメロディーが浮かんでくる。私には「海行かば」は「軍歌」、「鎮魂歌」というより、ミサ曲の一つや賛美歌に近い。

 ところで、色の呼び名と船首像の「藍青」、「紺青」とは微妙に違う。青藍色(せいらんいろ)は紫みを含んだ暗い青色。紺青色(こんじょういろ)は顔料の「紺青」に由来する色で、紫色を帯びた暗い上品な青色。「藍青色」は「らんじょういろ」ではなく、「らんせいいろ」と読み、その色は藍色を帯びた青色。