ネジバナ(捩花)の花

 らせん状に花がつくので「ネジバナ」とは何とも直接的な命名だが、ラン科の小型の多年草、別名がモジズリ(綟摺)で、興味深い特徴をもっている。花序がらせん的で、右巻きと左巻きの両方があり、中には花序がねじれない個体や、途中でねじれ方が変わる個体もある。らせんが右巻きと左巻きの比率は大体1対1である。開花時期は夏至の前後からで、既に湾岸地域では咲いている。画像のネジバナはどちら巻きか確かめてほしい。

 ネジバナは小さなピンク色の花が10個以上らせん状について咲いていて、それを見れば、誰もが「なぜねじれるのか」と問いたくなる。花がみな一方向に向けば、茎が傾くので、花の方で工夫して万遍なく花をつけたという説があるが、真偽のほどはわからない。画像のメドーセージの(一方に傾いた)花のつき方を見ると頷けないこともないが…

 巨視的に見れば宇宙の構造もらせん(渦巻き)である。自転しながら公転する地球も広義のらせんを描き、太陽系自体が銀河系の中を回転し、元の位置からずれていき、らせんが入れ子になっている。DNAは、右巻き二重らせん。このDNAの基本的構造はB型DNAと呼ばれ、今では小学校の教科書にも書いてある。さらに、二重螺旋構造のDNA自身も高次のらせん構造を繰り返し、染色体をつくっている。ここにもらせん状になった入れ子構造が見られ、生命から宇宙まで、自然のありとあらゆる場面にらせんが登場している。

ネジバナのねじれる適応的な説明。ネジバナは虫媒花で、ハナバチがよく訪れる。ネジバナのねじれ具合が小さい株は、大きい株に比べて沢山花をつけているように見えるため、ハナバチが頻繁に訪れる。一方、種子の遺伝的多様性を高める面では、ねじれの小さいものは大きいものよりも隣の花同士の距離が近いため、ハナバチは次々と同じ株の隣の花に訪れることが多くなり、自家受粉が頻発する。つまり、昆虫が少ない環境では、ねじれの少ない花が有利であり、昆虫が多い環境では、自家受粉を防ぎやすいねじれの大きい花が有利になる。

 

 

メドーセージ