パークボランティア活動の背後

 世界最初の国立公園は1872年に指定されたイエローストーン国立公園で、公園全体が国有地です。世界の国立公園制度には営造物公園制度と地域制公園制度があり、前者は土地を公園管理局が所有し、管理する制度で、アメリカやカナダなどで採用されています。公園全体を国が所有するので、国が一括して管理できます。一方、後者は土地所有に関わらず地域を指定する制度で、日本やヨーロッパ、韓国などで採用されています。民有地も含まれるため、土地所有者や資源の利用者、周辺住民など公園に関わるそれぞれの利益を調整し、管理する必要があります(日本の国立公園の25.6%が私有地)。

 さて、環境省所属の「パークレンジャー」は国立公園を管理する「自然保護管」。アクティブレンジャーは環境省所属の非常勤の国家公務員で、パークレンジャーを助け、国立公園の保護管理、利用者指導、自然解説などを担当する「自然保護官補佐」で、2005年に導入されました。パークレンジャーは国家公務員総合職試験(森林・自然環境)、国家公務員一般職(大卒程度)(林学、農学又は土木)のいずれかに合格し、面接を経て採用され、34の国立公園に300名弱しかいません(アメリカは13,000名ほど)。

 パークボランティアは国立公園で解説活動やゴミ拾い 、施設の管理などを自発的に無償で行う人たちです。全国の地方環境事務所で募集・登録をします。活動内容は各国立公園によって異なり、パークボランティアに関することはすべて各自然保護官事務所に託されていて、そこにいるパークレンジャーの裁量に委ねられています。日本で国立公園 のボランティア制度が導入されたのは1957年。1953年レンジャー制度が始まり、レンジャー補佐のため1957 年に国立公園臨時指導員を設置しました。1985 年に当時の環境庁の自然保護教育活動推進事業の一つとして、自然保護官事務所と密接に関係が持てる自発的参加型のパークボランティア制度が始まりました。

 パークボランティアの高齢化、活動内容が各自然保護官事務所とそこにいる自然保護官の裁量に任されているのが現在の大きな問題ですが、妙高里山応援団、生命地域妙高高原サポーターズなどのパークボランティアについて環境省のホームページによれば、「国立公園において、自然観察会等の解説活動や美化清掃、利用施設の簡単な維持修理などの各種活動について、広く国民の参加を求め、一層の活動の充実を図るとともに、自然保護の普及啓発を図ることを目的として、これらの活動に自発的に協力して頂ける方々をパークボランティアとして登録しています。」と説明されています(このような説明の後にPDFで登録者数の表があるのですが、これがなんと平成24(2012)年のもので、妙高高原が単体で41名とあり、全国では1569名)。

 妙高戸隠連山国立公園では特定外来生物オオハンゴンソウが繁殖していて、地域の人たち、パークボランティアと協力して駆除活動を行ってきました。いもり池周辺や笹ヶ峰でパークボランティアによる自然観察会や夏休み自然教室を開催し、野尻湖では野尻湖ナウマンゾウ博物館や地元と協力して観察会やカヌー体験を実施し、戸隠では冬の雪上観察会を開催するなど、地域、季節に応じて様々な活動が行われています。それらは次の資料を見ると、詳しくわかります。

https://www.env.go.jp/park/myokotogakushi/topics/index.html

https://www.env.go.jp/park/myokotogakushi/effort.html

https://www.env.go.jp/park/myokotogakushi/topics/index.html

Myoko vision -妙高ビジョン-

~「国立公園妙高」を次代へつなぐ 自然環境の管理運営方針~

https://www.city.myoko.niigata.jp/fs/1/8/2/5/0/3/_/08.pdf

 

 この6月1日に「妙高戸隠連山国立公園管理運営計画の策定について」が信越自然環境事務所から、妙高戸隠連山国立公園における管理運営計画が策定されました。環境省では国立公園又は国立公園内の地域ごとに国立公園管理運営計画を作成しています。妙高戸隠連山国立公園は、平成27年3月に上信越高原国立公園から分離独立したことに伴い、平成28年度に地域関係者、関係行政機関、有識者からなる妙高戸隠連山国立公園連絡協議会を立ち上げ、管理運営計画に記載すべきビジョン、管理運営方針などの検討をすすめ、パブリックコメント等を経て策定しました。施行日は令和4年6月1日(水)で、やっと本格的な管理運営がスタートしました。

 日本の国立公園でのパークボランティア活動は2010年代初頭に活動の整備がなされ、その後は大きな変化がない状態が続いています。レンジャーやボランティアの質と量の改善は僅かで、それがいもり池周辺のオオハンゴンソウスイレンの駆除に反映されています。妙高高原でのボランティア活動は他の国立公園に比べると当初から比較的活発で、市と市民の協力があったことが窺えます。その伝統をこれからも残していく必要があります。そのためにも、パークレンジャーやアクティブレンジャーとボランティアの協力が不可欠で、近年のボランティア高齢化にも対処しなくてはなりません。