アジサイの花(2)

 花弁 (花びら)の外側の部分が萼(がく)、その一枚が萼片。花弁が退化し、萼弁が花弁の役割を果たしているのがキンポウゲ科の植物たち。アネモネクレマチス、キンポウゲ、シラネアオイ等々、そして、アジサイ。この植物たちの花弁に見えるものは萼弁。アジサイの花も花びら状のものは萼弁で、本物の花は小さく、目立たない。

 花弁も萼弁もほとんどなくなり、葉が花弁の役割を担っている植物があり、葉が変化した苞(ほう)が花の代わりをしている。ポインセチアブーゲンビレアミズバショウ等々で、既述のヤマボウシハナミズキの花も苞で、本物の小さな花は苞の中心にある。

 では、なぜ花弁がない植物が生まれたのか。まず、「退化してなくなった」といった理由が考えられる。花弁がない植物は風媒花で、風によって花粉を飛ばして受粉する。そのため、虫を引き寄せる花弁が必要なくなり、小さく退化した。だが、萼や苞が花のように変化した理由には別の説明が必要だ。これには系統的な要因が深く関わっているようで、原始的な花は萼と花冠が未分化な同花被花で、そこから萼と花冠が分化した異花被花が派生した。多くの花は異花被花だが、系統群によっては未分化のものもある。どうしてこのようになったかの説明を私は知らない。

 アジサイの花の進化など知らなくても、アジサイの花を味わうことは十分できる。アジサイの花を「感覚的に味わう、楽しむ」ために知識など必要ないのだ。