ナツツバキの花

 ナツツバキ(夏椿、沙羅)はツバキ科の落葉高木、別名はシャラノキ。名前の通り、6月~7月にツバキに似た白い花を咲かせる。新緑、紅葉、幹の様子が美しく、湾岸地域でも見ることができる。葉は長さ10センチほどで、表面の葉脈は凹み、裏面には長い絹毛がまばらにある。花は5枚の花弁があり、その先端はまばらにギザギザしている。

 平家物語に登場する「沙羅双樹(サラソウジュ)」(フタバガキ科)と似ているが、直接の関連はない。寺に沙羅双樹として植えられることが多いが、釈迦が沙羅双樹の下で涅槃に入ったとされているからである。日本ではナツツバキが沙羅双樹と誤認されたようである。

 俳句では「沙羅の花」、そして「夏椿」が共に夏の季語である。一日花のナツツバキは、朝開いた花が夜に命を終え、椿と同じく花を上向きに落下する。朝見ると、その花が美しいままの姿で木の周りに散り敷かれている。 

 

石田波郷 沙羅の花 捨身の落花 惜しみなし(『酒中花以後』)