シランの花(2):中学生のための頭の体操

 「シロヤマブキ(白山吹)」と「シロバナヤマブキ(白花山吹)」は違います。「山吹色」の語源となったヤマブキには白い花が咲く品種「シロバナヤマブキ」があります。シロヤマブキと混同されやすいのですが、二つは属が異なる別物です。シロヤマブキは一属一種で、ヤマブキとは別の種類です。

 それと同じように、「白花紫蘭」と「白蘭」が違うかといえば、白花紫蘭と白蘭は同じでした。この二つを「白い紫蘭」と呼んだとすれば、「白い紫蘭」は「丸い三角形」と同じように、文字通りには矛盾した概念で、それゆえ、存在しないものだと結論したくなります。でも、このような問いはどこか間抜けな問いに見えるらしく、老獪な大人は答えることを巧みに回避するのが常です。

 「シラン」の定義はシランの知識に基づく言語的、経験的なもので、歴史的、地域的に変化します。定義は随時改定可能で、それが経験的な知識の本性の一つなのです。でも、ユークリッド幾何学における「三角形」の定義は時空を超えていて、その定義の中には円も曲線も入っていません。ですから、白色の紫蘭は定義上存在可能なのですが、ユークリッド幾何学の丸い三角形は定義上存在できないのです。

 「シラン」の定義は既述のように、経験的なもので、経験が変化すれば、それに応じて定義も変化して構いません。三角形の定義も幾何学の種類が変われば、変わって構わないのですが、ユークリッド幾何学という文脈の中では円と三角形は異なる定義をもち、円は三角形ではなく、三角形は円ではありません。

 そのため、白いシランの画像は見ることができるのですが、ユークリッド幾何学のモデルの中では(つまり、君のノートには)丸い三角形を描くことができないのです。

 文脈からほぼ独立した三角形は感覚するより考えることが主になるのに対し、文脈に依存するシランは感覚することがより重要で、その結果、私たちは味わい、楽しむことができるのです。

ヤマブキ

シロヤマブキ