蕗の花

 フキ(蕗、苳、款冬、菜蕗)は、キク科フキ属の多年草で、早春の花茎がフキノトウ(蕗の薹)で、子供の頃は雪解けの目印のようなものでした。山野に生える春の山菜で、当然その味は私には受け入れがたく、大人が好むのを理解できませんでした。

 フキとフキノトウとは一見別の植物にも見えますが、フキノトウはフキの花のことです。この花が咲いた後には地下茎から伸びる葉(フキ)が出てきます。つまり、フキは花と葉柄が別々の時期に地下から顔を出す植物なのです。

 フキの花茎は数枚の大きな鱗のような葉で包まれ、特有の香気とほろ苦い風味が喜ばれ、花がほうけたものは蕗の姑(しゅとめ)とも呼ばれます。「ほうける(呆ける、惚ける」は私のような老人を形容するにピッタリな動詞ですが、茎が伸び、花の咲ききったものが「蕗の姑(蕗の薹の別名)」です。「薹が立つ」も「盛りが過ぎる、食べる時期を過ぎる」ことですから、よく似た表現なのです。

 

雪国の春こそきつれ蕗の薹(高浜虚子

 

*画像はどれも「蕗の姑」です。

f:id:huukyou:20220307051737j:plain

f:id:huukyou:20220307051756j:plain