トベラの種子

 トベラ(扉)はトベラトベラ属の常緑低木。光沢のある濃い緑色の葉をもつことから、公園や街路によく使われています。「扉」と書いて、「とべら」と読みます。2月の節分に、この木の枝を扉にはさんで、邪鬼を払う風習があったため、「とびらの木」と呼ばれていましたが、それが省略されて「とべら」になりました。葉っぱは固い楕円形で、外側に反り返り、花には芳香があります。

 トベラの実(画像)は秋が深まると、三つに裂けて赤い種(画像)が現れます。種は無味無臭で、鳥の餌になるより鳥の身体について運んでもらうためか、粘々しています。目立たない脇役と評されるのがトベラですが、そのトベラが今の季節に示す赤い種はとてもエロティックな姿で、私には驚きです。チャールズ・ダーウィンの祖父エラズマス・ダーウィンロマン主義文学とリンネの植物学がミックスされた自著『植物の園(The Botanic Garden)』がエロティックだと批判されると、リンネの分類学の本質はエロティシズムにあると反論しています。リンネやダーウィンによれば、花、実、種は本来エロティックなのです。

 トベラの果実はさく果で、果皮が3枚に割れて開き、中から赤い種子が現れて、それが何ともエロティックなのです。緑色の葉との色のコントラストも鮮やか。種子はべたつく粘液に被われていて、粘液は果皮の内側から出ていて、舐めても甘くありません。種子は糖分の多い果肉を持つ液果ではなく、赤いのは表面だけで、中の大部分は白い胚乳。メジロなどはその見かけの容姿に騙され、トベラに操られているのかも知れません。

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