秋の黄色:メマツヨイグサとセイタカアワダチソウ

 メマツヨイグサセイタカアワダチソウも秋の月に合いそうな黄色い花をつけるが、いずれも外来の侵入生物である。自然の風景は時代、場所によって変わる。では、自然の中の何が変わるのか。短い時間の経過で変わるのが生き物である。山や海に比べると、人や動植物は世代交代を繰り返しながら、意外に素早く変わっていく。そのためか、意識的に保持されないと変化し、時には消えてしまう。

 太宰治の『富嶽百景』にあらわれる月見草はマツヨイグサであったとされる。ツキミソウは夜に咲く白い花で、メキシコ原産。江戸時代に鑑賞用として渡来した。花期は6-9月ごろで、花は夕方の咲き始めは白色だが、翌朝のしぼむ頃には薄いピンク色となる。だが、太宰の月見草はこのツキミソウではなく、今ではマツヨイグサの同属種であるオオマツヨイグサマツヨイグサ、メマツヨイグサなどのこと。野山の道端、草地、荒れ地などに生えるマツヨイグサ属は日本に自生種が無く、すべて外来種である。湾岸地域では先に渡来していたマツヨイグサ、オオマツヨイグサを駆逐しているのがメマツヨイグサ(画像)。

 一方、セイタカアワダチソウ(背高泡立草)はキク科アキノキリンソウ属の多年草。北アメリカ原産で、日本に観賞植物として導入された帰化植物外来種)。ススキなどの在来種と競合する。河原や空き地などに群生し、高さは1 - 2.5m、11月頃まで花をつける。アキノキリンソウ属は世界で約100種が知られていて、日本で急に増えたのは戦後である。アメリカ軍の輸入物資に付いていた種子が広がり、昭和40年代以降には関東以西から九州まで大繁殖するようになった。

 昭和40年代にアレロパシー効果でススキ等その土地に繁殖していた植物を駆逐したのがセイタカアワダチソウ。しかし、平成に入る頃には、その領域に生息していたモグラやネズミが駆除され、土壌に肥料成分が蓄えられなくなり、また蓄積されていた肥料成分を大方使ってしまったこと、自らのアレロパシー効果により種子の発芽率が抑えられる等の理由により、繁殖がめっきり減った。セイタカアワダチソウの勢いが衰えた土地にはススキなどの植物が再び勢力を取り戻しつつある。一方、北アメリカでは逆にススキが侵略的外来種として猛威を振るっていて、セイタカアワダチソウの生息地を脅かしている。

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