中学生のための頭の体操:シラン

 「白山吹」と「白花山吹」が違うように、「白花紫蘭」と「白蘭」が違う訳ではなく、「白花紫蘭=白蘭」です。二つを「白い紫蘭」と呼んだとすれば、「白い紫蘭」は「丸い三角形」と同じように、矛盾した概念で、それゆえ、存在しないものだと結論してよいでしょうか(このような問いはどこか間抜けな問いに見えます)。
 紫蘭の定義は経験的なもので、歴史的、地域的に変化します。普通なら、シランの定義の中に特定の花の色は入っていません。定義は随時改定可能で、それが経験的な知識の本性の一つなのです。でも、三角形の定義は時空を超えていて、その定義の中には円も曲線も入っていません。ですから、白色の紫蘭は存在可能ですが、丸い三角形は存在できないのです。
 紫蘭の定義は既述のように、経験的なもので、経験が変化すれば、それに応じて定義も変化して構いません。三角形の定義も幾何学の種類が変われば、変わって構わないのですが、ユークリッド幾何学の中では円と三角形は異なる定義をもち、円は三角形ではなく、三角形は円ではありません。
 ですから、白い紫蘭の画像は見ることができるのですが、ユークリッド的なモデルの中では(つまり、君のノートには)丸い三角形を描くことができないのです。