エノキとヤマモモの花

 エノキは北海道以外の全国に自生するニレ科の落葉樹。エノキという名の由来には諸説あるが、漢字の「榎」は日本で作られた文字で、中国では「朴樹」と表記する。枝分かれが多く、大きな緑陰を作るため、各地で植栽され、その巨木が今日でも見られる。そのためか、私はエノキが花をつけることを想像だにしなかった。新緑を確かめようと近づくと、新芽だけでなく、小さな花が咲いているではないか。

 エノキは春になると芽吹きと共に緑色の小さな花を咲かせるが、目立たない。雌雄同株だが、花には両性花と雄花がある。両性花の後には球形のカラフルな実ができ、秋にに熟す。新枝の上部の葉腋に両性花、下部に雄花がつく。両性花は花被片4個、花柱が2裂し、大きく目立つ。雄花は花被片4個、ときに5個、雄しべは花被片と同数、中心部に白色の綿毛が密生する。

 ヤマモモは葉が密生し、丈夫であることから、街路や公園に数多く植栽されている常緑樹。湾岸地域でもよく見る木だが、エノキと違って、ヤマモモは雌雄異株で、3-4月になると葉の脇から花穂を出して小さな花を咲かせる。雄の木に咲く雄花は黄色あるいは赤っぽい褐色の穂状で長さは2~4センチほど(画像)。雌の木に咲く雌花は黄緑色で直立し、長さは1センチほど。いずれも開花期間は短く、観賞価値も乏しい。雌木は6月の梅雨時期にルビー色の美しい果実を結ぶ。

 エノキもヤマモモも、その花が人々の関心を惹きつけることはなさそうである。

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