秋の葉の色の変化

 紅葉は植物の葉にアントシアニンが蓄積し、クロロフィル葉緑素)が減少することによって引きこされます。紅葉や黄葉の色は、アントシアニンクロロフィル、カロテノイドの三種の色素によって決まります。昨日花の色について述べたように、アントシアニンは多くの植物に含まれる色素で、植物の花や実などの赤や青、紫など幅広い色を生み出します。一方、クロロフィルは光エネルギーを吸収してエネルギーをつくる植物には重要な化学物質で、緑色をつくる色素成分でもあります。カロテノイドは黄色の色素で、紅葉する前の多くの葉に含まれていますが、春や夏はクロロフィルのほうが多く含まれているために葉は緑色や黄緑色に見えています。

 気温が下がり出すと、葉に含まれるクロロフィルが分解され始め、同時に葉と茎や枝をつなぐ葉柄の付け根にコルク質の離層がつくられてきます。離層によって、葉と植物全体の間での水や栄養分などの移動が妨げられ、分解されずに残っているクロロフィルが行う光合成によって生成されたグルコースが葉に蓄積されるようになります。この余剰なグルコースからアントシアニンが合成され、その時、カロテノイドの分解はクロロフィルの分解よりも遅れて行われるため、クロロフィルが分解されるにつれて次第に黄色が目立つようになります。分解過程にある緑色のクロロフィル、葉に残る黄色のカロテノイド、合成される赤色のアントシアニンの三種の色素の量などによって、紅葉の色が決定されます。イチョウやポプラなどの黄葉の場合は、アントシアニンが合成されにくいために赤色にはなりません。花では青色や紫色を発色するアントシアニンですが、紅葉が起こる葉の細胞は酸性状態になっているため、アントシアニンは紅葉を引き起こします。

 このような説明から、花と葉の違いはあっても紅葉、黄葉、褐葉に関わる色素は同じで、似たような化学過程が起こっていることがわかります。花も葉も似たような化学に左右されていると結論して間違いはなく、それが「花見」や「紅葉狩り」につながったことも頷けます。でも、生死が異なるように、花色と紅葉は随分と異なるものというのも私たちの常識です。その違いについては改めて考えてみようと思います。

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ナンキンハゼ

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イチョウ

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アメリカフウ

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モッコク