青色の染め方

 昨日は青の顔料について述べました。今日は染料の話です。4,5歳の頃の私は着物をよく着ていて、それが紺絣だったのを憶えています。かすり(絣)は所々かすったように文様を織り出した織物、または染文様のこと。当時は私だけでなく、多くの人が普段着にしていたように思います。紺絣の紺は色名の一つで、「暗い紫みの青」。一般に、濃い藍染めの色を指します。藍染めの染物屋は「紺屋」と呼ばれ、木綿の普及とともに染物屋全体の代名詞となりました。紺色は日本人に親しみのある色で、紺地に白い絣のある紺絣は普段着の典型でした。現代でも剣道、弓道などの袴、サッカー日本代表のユニホームは紺色。

 もう一つの紺色はジーンズ。私は今でもはいています。普通のジーンズはインディゴ染めですが、藍染めのものもあります。藍染めと合成インディゴの染め上がりは見た目あまり違いがありません。インディゴ染めは化学薬品を使用して染めたもので、天然よりも不純物がないため鮮やかに染まります。藍染めと違って着用時の摩擦や洗濯によって色落ちするという欠点ともいえる特性があり、それがジーンズを魅力的なものにしてきました。

 さて、藍色は青色よりももっと深い青で、英語ではindigo blueと呼ばれます。植物の「藍」で染めると、深い青色のような色になることから、藍色と呼ばれるようになりました。それに対して、青色のほうが一般的により親しみがあります。青色にも種類がたくさんありますが、これまで見てきたような空の色や水を表す色です。

 藍以外で青に染まる唯一の植物がクサギで、その花は既に紹介しました。クサギの実(画像)を草木染めに使うと、媒染剤なしで鮮やかな空色に染めることができます。「藍染め」も「草木染め」と同じように葉から色をとりますが、「藍染め」と「草木染め」はそもそも全くの別もの。

 「藍染め」で使う藍草は水に溶けないので、「草木染め」のように熱湯につけて染める成分を抽出する「煮出し」ができません。「藍染め」では水に溶けない不溶性の藍を水に溶ける成分である水溶性に変える必要があります。それには二つの段階があり、最初の段階は藍草から蒅(すくも)をつくることです。藍草の葉を醗酵させると蒅ができます。次は紺屋が蒅を使い、木灰の灰汁(あく)で藍を建てて染め液をつくります。「草木染め」は、染色すると染めた成分が繊維の中にまで入りますが、「藍染め」では、繊維の中にまで入りません。「草木染め」がすべてを染めるのに対して、「藍染め」では色の成分を「付着」させるのです。藍染めは、色の成分を表面にコーティングするような染め方です。

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