二つの検査を通じて

 CNNによれば、 ニューヨーク州のクオモ知事は23日、住民3,000人を対象に実施した新型コロナウイルスの抗体検査の結果、これまでに13.9%に陽性反応が出たと発表。この結果は新型コロナウイルスの感染が当初確認されたよりも早くから広がっていて、感染者の数も公式統計より多いことを示している。また、ニューヨーク市に限ると21%。ニューヨーク州の人口は1,950万人、ニューヨーク市の人口は840万人。つまり州全体で約270万人、市では約180万人がウイルスを持っていることになり、公式統計の数倍に上る。ジョンズ・ホプキンス大学の専門家アメッシュ・アダルジャ氏はこの結果について、新型コロナウイルスによる死亡率が公式統計よりも低く、はるかに広く拡散していて、ある程度の抗体ができているという意味で、一種の安心感を抱かせると話している。

 このCNNの説明はとてもわかりやすいのだが、これが過去に感染したことを示す抗体検査でなく、今感染していることを示すPCR検査なら、私たちはとても不安になるしかない。それが慶應義塾大学病院が行ったPCR検査。4月23日までに、新型コロナウイルス感染症以外の治療目的で来院した無症状の患者67人にPCR検査を行ったところ、4人(5.97%)が陽性だと判明した。これは4月13日から4月19日に行った術前および入院前PCR検査で明らかになったもの。
 慶應病院は、院内感染、研修医の感染が起こったことを通じて、複数診療科によるCOVID-19救命チームを結成し、院内をゾーニングするなど新型コロナウイルスの院内感染に対する防御策を講じてきた。慶應病院の診療体制は、全身麻酔手術を予定する患者への入院前PCR検査および胸部CT検査を実施。また、入院治療を必要とするすべての患者(分娩を含む)に入院前のPCR検査を実施。その結果、来院患者の6%から新型コロナウイルスに陽性の反応が出た。この結果から、慶応義塾大学病院に限らず、すべての医療従事者、介護従事者、病院、診療所、保険薬局介護施設などはさらなる対策が求められることになる。一方、外来はがん化学療法や免疫難病に対する薬物療法について慎重に外来診療を継続。その他の外来診療は、電話診療を活用し、病状の確認、検査結果のお知らせ、次の検査予約、必要な場合の処方箋送付などを行っている。感染リスクの高い内視鏡検査、歯科・口腔外科、眼科、耳鼻科、リハビリテーションの診療については縮小ないし停止。慶應病院は今後の感染者数の状況を見ながら、がん、免疫難病、その他高度な医療が必要な疾患に限定し、5月7日をめどに新規初診患者の受付を開始する方針。
 この概略説明を見ただけでも、医療の現場と実情が見えてくる。医療崩壊を叫ぶ前に、実際の病院がどのような対応をしているか知っておくべきだろう。