クサノオウとヘラオオバコ

 クサノオウ(瘡の王、草の黄、草の王)はケシ科クサノオウ属の草本植物。全草に約21種のアルカロイド成分を含み、その多くが人間にとって有毒。黄色い汁が皮膚に触れると炎症を起こす場合があり、誤食すると昏睡、呼吸麻痺、感覚末梢神経麻痺などを起こす。

 「クサノオウ」とはずいぶん大業な名前である。「クサ」には通常の雑草とは違う意味があるようだ。なかなか美しい姿をしているが、この美貌の陰には恐ろしい毒が潜んでいる。この毒を利用して、薬草として重宝されていた。クサノオウという名前がついたのもそこに理由があった。日本中で様々な呼び方をされ、いずれも薬や薬効、毒に関わっていた。クサノオウは「草の黄」であるという説。これは茎や葉を切断すると中から黄色い汁が出るからだった。この黄色い汁こそ毒であり薬である。次は「草の王」であるという説。これは薬草の王という意味。そして、「瘡(くさ)の王」であるという説。瘡とは皮膚病のことで、皮膚病を直すという意味。

 どれにも通じるのが、薬草として昔から私たちの生活に密着していたこと。子供が迂闊に口に入れたりすると大変危険な野草。黄色い汁に皮膚に触れただけで炎症を起こす。鎮痛剤としてアヘンの代用に使われ、尾崎紅葉が胃癌にかかった時、弟子の泉鏡花がこのクサノオウの薬を入手するために大変苦労したという話が残っている。花弁の中央に長く突き出た雌蕊があり、すぐ横にある長い棒状のものがこの花の実(画像)。熟すると莢がはじけて中の種子を遠くへ弾き飛ばす。

 クサノオウンの横で咲いていたのがヘラオオバコで、ヨーロッパ原産の帰化植物で、江戸時代に渡来。多年生の草本で地下に太い根茎がある。葉は細長く、長さ20cmほどになる。春から夏にかけて高さ30cmほどの花茎をだし、下部から上部へと次々に開花する。生育地は道端、堤防などである。和名はオオバコの仲間で、葉が細長くヘラ型であるとの意味。大型ものものをオオヘラオオバコとして区別することがある。

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