保健所の役割

 PCR検査についての政府の立場は、PCR検査をむやみに行うと、それが医療崩壊につながり、死者や重症者を出さないため、高齢者や基礎疾患がある人の受診を優先するという訳のわからないもので、それが繰り返されてきた。PCR検査に関して日本は開発途上国

 感染者が都内で増えてくると、感染経路を特定する保健所の人員不足が浮き彫りになっている。保健所を運営する自治体に対し、厚労省は態勢強化を求めるが、対応はほぼ不可能。感染者が急増する今、医療崩壊の前に保健所の機能崩壊が既に起こっている。

 専門家会議の尾身副座長は、医師が必要と判断しながら保健所が認めず、PCR検査ができなかった例が相次ぎ、実施件数が伸びない要因の一つは保健所の人員不足にあると懸念を示す。東京23区には23の保健所がある。ただ、行革によって保健所数は日本全体でこの30年で300以上減り、予算や人員が抑えられてきた。政府は3月末にまとめた基本的対処方針で「クラスター対策を抜本強化する観点から、保健所の体制強化に迅速に取り組む」と明記。自治体の本庁職員の動員や、保健所経験のある退職者らの臨時雇用などの取り組みを急ぐよう求めた。

 病院と並び最前線にある保健所の状況は深刻である。例えば、ある保健所の電話相談は2月後半から一気に増え、1日に300件を超え、朝から鳴りっぱなし。次がPCR検査。医療機関との調整が難しい業務で、検査を実施する際、患者の検体を取りに行き、検査機関に運ぶ。保健師と医師が現場に赴き、防護服を身につけて周りに気を配りながら実施する。韓国のドライブスルーとは大違いの非効率的な大昔のやり方である。さらに、検査後に病院とつなぐ作業も大変。受け入れを断られることも少なくない。さらに、濃厚接触者の特定と健康観察(朝晩2回、多い時には100人以上の体調をメールや電話で管理)や、感染者の行動履歴の確認、さらに、夜間の相談対応もある。

 私がまるで知らなかったことだが、自分の生まれた市には保健所がなく、隣の市にある保健所の管轄となってきた。感染爆発の前に、病院だけでなく、保健所の役割を再認識しておく必要があるだろう。PCR検査は保健所ではなく、民間に委託し、保健所は日常業務を確実にこなし、発熱外来や病院の患者対応にその能力を発揮すべきだろう。