専門家会議の戦略

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*グラフは4月3日の日経電子版

 グラフをつくった西浦教授は数理モデルを使って解析する専門家で、専門家会議のメンバー。その予測によれば、何も対策を講じなければ東京都の感染者数は急増し、1日あたり数千人を超えてさらに増加する。一方、8割程度接触を減らすことができれば、10日~2週間後に1日数千人をピークに減少させることができる。西浦教授によれば、今の東京は感染の爆発が始まった可能性があり、外出の自粛ではなく、より強い外出制限が必要。ニューヨーク市では東京都より2週間早く感染が拡大し、1日100人を超えた2日後に1千人、5日後に2千人、さらに10日後に4千人を突破し、爆発的に感染者が増えている。遅くとも来週前半までには「自粛要請」より強い「外出制限」を出す必要がある。
 ヨーロッパの諸国は自国で爆発的な流行が起こるとは考えていなかった。その例がイギリスだが、当初のウイルスへの自由放任政策は直ぐに撤回された。さらに、アメリカ。カリフォルニア州ニューヨーク州との数日の非常事態宣言発出の違いが、今では10倍もの死者数の違いになっている。オーバーシュートがいつ起こるかの見極めは政治家にはできない。政治家の勘や皮算用に頼らず、専門家の意見に素直に従うべきである。
 さて、クラスターが増え過ぎると、対処できなくなるが、日本の次の対策は何か。行動変容の中の人と人の接触の部分だろう。できるだけ孤立し、接触しないこと、引き籠りがウイルス対策には理想。あらゆる場面で社会的距離(social distancing)を保つことの単なる要請ではなく、暫くは個人と個人の接触を半ば強制的に断つことであり、孤立化を経験することである。されど、人間は動物、動き、交わるのが好きであり、それを停止するのは一時的であれ、人の心理を巻き込んだ大きな社会実験でもある。

 社会的距離をとり、通常の80%の削減を行うことによって、大幅に感染者を減らし、減ったところでこれまで行ってきたクラスター潰しを再開しようというのが、専門者会議の新しい(混合)戦略。「PCR検査と保健所の対応の拡充、医療体制の整備を再構築し、人と人との接触をできるだけ避けるという行動変容によって感染の爆発に備える。そして、社会的距離の制限を守って感染者の急増に対処し、クラスター潰しを地道に繰り返す」というのが日本の対応ということになる。