オーバーシュート(爆発的な感染拡大)

 このタイトルは英語なのだが、迷うにしても何となくわかってしまう。今は株価もオーバーシュートしている。医学用語とは違い、公衆衛生学や感染症学の用語は自然言語で、直感的なのだ。リンクが追えない市中感染者からのR>1の感染によって、感染者数の爆発的増加が制御不能になって医療的対処能力の上限を超えてしまった状態が「オーバーシュート」。

 専門家会議の分析・提言の要点は、今は何とかもちこたえていること、北海道でのクラスター対策に一定の成果があったこと、オーバーシュートを防ぐことの重要性、地域に応じた対応、クラスター発生防止のための行動規制、変容。

 オーバーシュートは武漢だけでなく、ヨーロッパでも起こった。大規模イベントはオーバーシュートの引き金になり、オリンピック中止につながる。専門家会議では議題に出ていないとのことだったが、圧力があったのだろう。

 アウトブレイクは突発的な発生のことで、これも最近はよく耳にする。ビックリ仰天のアウトブレイクが日テレの朝8時からの番組。大阪府知事が朝から登場し、厚労省の文書を自らの政治判断で公表したとし、それなりの出席者たちが全員厚労省のデータ隠しを非難したのだ。確かに具体的に対策を講じない場合の感染者数や重病者数が文書に書いてあったが、それは提案内容を正確に表現するためのものであって、それら数字はデータではない。データや情報は推測や推定ではない。シミュレーションした数字は実測値ではない。だが、全員がデータだと早合点し、情報隠匿とでも思ったらしく、情報公開すべしとなったのだ。

 知事が公表した文書内容は19日の専門家会議のものと同じで、それを大阪と兵庫について詳しく数字まで使って具体的に述べ、オーバーシュートを防ぐ手立てを親切に提案したもので、専門家会議の分析・提言と何ら変わらない。どうも親切が仇となったようだ。