カラスウリ

 夏の夜に花弁の縁が糸状に長く伸びる花姿は尋常でない光景。蕾の時は折りたたまれている花弁が、短時間で完全に開き切り、しかも「糸」が伸びるが如くに広がり、絡まることはありません。開花は夜に始まり、翌朝には萎れます。白い花は月の光の下でもよく目立ち、怪談によく合うのですが、実は花粉を媒介する蛾にはかっこうの目印なのです。夜に花開くためか、私がカラスウリを知ったのは大人になってからでした。
 カラスウリは林の縁などに生育する蔓植物で、空き地などでも比較的多く見られ、湾岸地域でも見ることができます。秋になると、オレンジ色の卵型の果実をつけます(画像は今頃のまだ青い果実)。果実の中の種子はよく「カマキリの頭のような形」と形容され、昔の人はこの種子を「結び文」(細く折って結んだ手紙)に見立て、「玉梓(たまずさ)」と呼び、それがカラスウリの別名になっています。伝奇小説『南総里見八犬伝』に出てくる世にも恐ろしい怨霊の名が「玉梓」で、私の中ではこれがカラスウリに連合されて、夏の妖怪物語の構成要素となってきたようです。
 同じカラスウリ属に、黄色い果実を付けるキカラスウリという植物があります。カラスウリと異なり、キカラスウリの果実は甘みがありそのまま食べることができます。一方、熟した実に苦みがあるのがカラスウリの果実です。でも、熟す前の果実やカラスウリの葉は食べることができます。

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