「おまん」考

 妙高の方言の代表格となれば、「おまん、おまんた」。それぞれ二人称の単数形、複数形で、これらこそが故郷を代表する方言だと思われていないだろうか。だが、これら単語は妙高独特の謂い回しではなく、実は日本中にありふれた二人称の表現なのである。大河ドラマ龍馬伝」で親しまれた土佐弁にも「おまん」は二人称として登場する。その「おまん」に「ら」がつき、「おまんら」になると二人称の複数形。さらに、おんし(男の二人称)、われ(男の二人称)、おまさん(目上の人に使う二人称)等々、懐かしく「龍馬伝」を思い出す人が多いのではないか。土佐も「おまん」を使っていた。
 甲州でも「おまん」は「あなた」、だが、「あなたたち」は不思議なことに「おまんとう」になる。志賀弁でも伊賀弁でも「おまん」は「あなた」。日本中を探していくとあちこちで二人称の意味の「おまん」が見つかる。様々な方言の中の共通の表現が「おまん」なのだと言いたくなってしまう。「おまん」はどこにもある人気の二人称なのである。ついでに、日本語の代表的な二人称の呼び方を挙げておこう。
お前、あんた、お前さん、じぶん(自分)、わい、てめぇ、貴様、汝(なんじ)、主(ぬし)、お主、御許(おもと)、此方(こなた)
 「スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説」の決めセリフの「おまんら、許さんぜよ!」は、夏目雅子主演の「鬼龍院花子の生涯」の「ナメたらいかんぜよ!」からヒントを得たもの。この映画の最高の場面での最高のセリフで、夏目雅子が生きている。土佐弁での「おまん」は、男が女に対して使う場合がほとんどで、目上に対しては使わず、目下か同輩に使う。では、妙高での使い方はどうだろうか。妙高の「おまん」をきちんと知りたいものである。