花の咲く時季は何を暗示するのか

 歳をとると何事にも心配が先に立ち、杞憂が安堵に優先する。今年の夏も暑かったが、「温暖化」という言葉がいつも常套句のように響いていた。そんなことが記憶に残ると、人は何でも温暖化に結びつけたくなる。
 花には「狂い咲き」、「二度咲き」といった現象がある。花の「狂い咲き」は昔からあった。それは、草木の花がその季節でないのに咲くことで、通常は春に咲く花が初冬の頃に咲くことである。「二度咲き」という言葉も使われてきた。だから、冬の今、春の花が咲くのは決して最近の現象ではないのである。だが、この「狂い咲き」現象が頻々と、しかも、かなり広く世界的に起きているとなると、不安になってくるのである。

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スイセン

 スイセンが咲いている(画像)。スイセンは中国から入ってきた多年草で、1月過ぎに花を咲かせる。花は長い花筒の先が六つに裂けて花びらのように広がり、花筒の入り口には黄色い花びら状のものが開いている。カラスノエンドウ(烏野豌豆)は道端や野山の日当たりのよいところに生えている。普通なら3月過ぎから葉の脇に紅紫色のとんでいる蝶のような形の花を咲かせるのだが、既にあちこちで咲き出している。

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カラスノエンドウ

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ハコネウツギ

 温かい冬の午後にスイセンカラスノエンドウ、二度咲きのハコネウツギを見ることができるのは儲けものだと喜ぶ気持ちになるのだが、その喜びも束の間で、花の咲く光景は何か不気味で、不安を煽る。花の咲く時季が早まったというのは既に珍風景ではなく、植物の変化がさらに顕在化してくるなら、人も重い腰を上げるのかも知れない。